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【読書】『写真家と名機たち』邦和秀峻(画:山上正一)

私は、撮る方も見る方も、写真にはまったく詳しくありません。特に、海外の著名な写真家と言われるとほんの数人しか名前を知りません。でも、素人なりにローライフレックスを使ったりバルナック・ライカに興味を持ったりすると、このカメラはどんな写真家が愛用し、どんな写真が撮られてきたのだろうということに興味を持つようになってきました。そんな関心に応えてくれるのがこの本です。

海外と日本で活躍した写真家60人とその愛機について、1人あたり2段組みの3ページを使い、似顔絵などと合わせて紹介しています(彼らが使っていたのと同じモデルのカメラの写真が出ていますが、彼らが撮影した写真については、文章での言及はありますが写真自体の掲載はありません)。

ローライの二眼レフ関連では以下の写真家が紹介されています。太字部分はこの本での見出し、★マークのところは本文などを参考にした私の補足です。


リチャード・アヴェドンとローライフレックスー大女優の本当の素顔を撮った写真家ー 
★マリリン・モンローの写真で知られる。ローライフレックス・オートマット(MX)以降の各型を使ったと思われる。

ロベール・ドアノーとローライフレックス・スタンダードーパリっ子を愛し続けた写真家ー
★パリの街角で人々を写し続けた写真家。その生涯は、孫によりドキュメンタリー映画として描かれている。「パリ市庁舎前のキス」という有名な写真についての裏話も。

フィリップ・ハルズマンとローライフレックスー「ジャンポロジー」という奇想天外な撮影方法ー
★著名人にジャンプしてもらい、その瞬間を撮影した写真で知られる。「ジャンプすることでその人が解放され、本当の姿が撮影できる」と言っていたそうです。オードリー・ヘプバーンや、マリリン・モンローなど、ウェブで見つけた写真を見ていると、たしかに解き放たれたような表情が印象的です。今の時代はスマホでジャンプ写真を撮ってインスタにアップしたりということもよく行われていますが、そうした写真の先駆者と言えるのかもしれません。

彼のジャンプ写真を集めた『Jump Book』という写真集があるそうで、ぜひ見てみたいと思いました。この写真集で主に使われたカメラは、年代からローライフレックスのオートマットⅡだろうと、『写真家と名機たち』の中では推定されています。

エド・ヴァン・デル・エルスケンとローライコードーパリの若者たちの哀歓を撮ったー
★パリで若者たちを写したストリート・フォトが有名。写真集『セーヌ左岸の恋』や、1980年代に日本を撮影した『日本の発見』など。

ヘルムート・ニュートンとローライフレックスー独自の過激な作風のヌード写真ー
★「ヴォーグ」や「エル」などのファッション雑誌で活躍した写真家。ローライフレックスをメインのカメラとして使用し、ローライ社は1994年に「ローライフレックス2.8GX ヘルムート・バージョン」という記念モデルを出しているそうです。今年の12月11日から、『ヘルムート・ニュートンと12人の女たち』というドキュメンタリー映画が公開されます。

イモジェン・カニングハムとローライフレックスー生涯現役だったポートレートの達人ー
★ポートレートや植物の写真で有名になった。オレゴン州ポートランド出身。ローライフレックス・オートマットⅢや、ローライフレックス2.8Fを使用しただろうと推定されています。

また、バルナック・ライカについては
ロバート・フランクとライカIIIc
名取洋之助とバルナック・ライカ
桑原甲子雄とライカDII
田村茂とライカII

という項目で取り上げられています。

この本にはハッセルブラッドを愛用した写真家も複数紹介されていますが、中でも気になったのは
リー・フリードランダーとハッセルブラッドSWCー「社会的風景を6x6判で表現した写真家」
です。高嶺の花ですが、SWCと風景写真というのは自分がとても興味を持っている分野なので。

ローライフレックスというカメラへの興味からこの本を手に取り、紹介されている写真家のことを調べていくと、自分がまったく知らなかった奥深い世界がそこに広がっていることを、ほんのさわりだけですが感じ取ることができました。ローライフレックスは、やはり人を撮ることに強みを発揮してきたカメラのようですね。私は主に景色を撮りたいのですが、この本を読み、せっかくローライフレックスを持っているのだから人物写真も撮ってみたいなと思うようになりました。自分がいちばん興味を惹かれたフィリップ・ハルズマンの「ジャンプ写真」を皮切りに、巨匠たちがどのようにローライフレックスを使っていたのかを少しずつ見ていこうと思います。

※『写真家と名機たち』の本文でも幾度も触れられていますが、ここで紹介した写真家たちはローライの二眼レフだけを使っていた訳ではなく、ほかのカメラも使う中でローライフレックスを愛用していた、あるいは写真家としての活動のある時期(人によってはずっとかもしれませんが)ローライの二眼レフを主として使っていた、という人たちです。念のために書き添えておきます。

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Sampo(山帆)
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