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「田中一村展」に行って奄美大島の空気を吸い込んできた

9月から上野の東京都美術館で開かれている田中一村展。普段は人が多い都心部に行くことがほとんどありませんが、この展覧会はぜひ見たいと思っていました。混雑を覚悟で出かけてきました。

https://www.tobikan.jp/exhibition/2024_issontanaka.html

大きな展覧会に行くのは、ソール・ライターの写真展以来。

予想以上の人出で、入場でチケットを見せる場所まで行き着くのに30分以上待たされました。中も大混雑。でも、300点以上が出展されている、見ごたえある展覧会でした。

展覧会の正式名称は、「田中一村展 奄美の光 魂の絵画」。田中一村(1908年〜1977年)は、生前は全く注目されることのない画家でした。50歳を過ぎ、奄美大島に移り住んでから描き続けた風景や動植物の絵が没後に知られるようになりました。

代表作は、この記事の扉の写真に出ている「アダンの海辺」でしょう。奄美の空気の感触まで伝わってきそうな絵の雰囲気に惹かれ、何度も写真集を眺めてきました。

田中一村の作品を主に所蔵しているのは、首都圏では一村が奄美に行く前に暮らしていた千葉県の千葉市美術館。そして奄美大島の田中一村記念美術館です。私は数年前、千葉市美術館で開かれた田中一村展にも行きましたが、今回はそれ以上の規模で集められた作品を堪能してきました。

若い頃は水墨画を描いていたから後年の作品でも印象的な余白が使われていることが多いんだなとか、夕刻を描いた作品がいくつかあって、赤みを帯びた静かな景色が好きだなとか、代表作の中にも描かれているアカショウビンという鳥はカワセミの仲間なのか(作品の英題にRuddy Kingfisherと書かれていました。血色の良いカワセミ、ということです)、といった点が、今回の発見です。

水墨画は、小説『線は、僕を描く』と続編の『一線の湖』で最近興味を持っているところでした(作者の砥上裕將さんは水墨画家です。水墨画の静けさと、そこに全力をかける主人公たちの熱意がともに伝わってくる、本当に面白い作品です)。

カワセミは、ランニングでたまに出会うとうれしい気分になります。

そんなふうに、自分の世界とリンクさせて感じるのは楽しいことです。田中一村の作品に出てくるアカショウビンに、一気に親近感が湧きました。

私は奄美大島に行ったことがありません。奄美には、田中一村が最後に暮らした家や日々散歩した道などが、今も残っているそうです。そのあたりを走ったらどんな風景が見えるんだろう。いい景色の中を走るのが好きなランナーとして、ぜひ一度訪れてみなくては、という思いを強くしました。

田中一村展、もう会期終盤ですが12月1日までの開催です。ご興味のある方は、ぜひ!


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Sampo(山帆)
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