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第3章 始動 ⑨「勲さんの苦しみ」

「―被爆後の症状っちゅうのはすぐ出ました。それはなぜかって言うと、白血球減少という症状があります。
 私の場合は、ちょっとしたできものとか切り傷がすぐ化膿して膿になってやがてかさぶたになるっていう。こういうかさぶたがいっぱいできてたの。  
 頭も強く掻くと痛いし、掻かないとかゆいというか、かさぶたがいっぱい…2年くらい続いたと思う。
 
 だからその間には、小学校に入学するときも来ます…仁田(にた)小学校に入学して、何日か通学するうちに、あだ名がついた。『かさぶた野郎』と。  
 『そばに寄るな!あっち行け!うつる!』そういういじめも受けながら小学校、中学校と大きくなっていく」。

 つまり、被爆後に浴びた放射線の影響で白血球減少によるかさぶたの症状が出たということだ。

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 さらに、勲さんの体験記にはこう書いてあった。

「(中略)仁田小学校に入学したころには、体調不良に悩まされた。全身に吹き出物ができて、かさぶたになり、痛かゆかった。『なんでできるのかな』と思っていた。 『かさぶた野郎』と呼ばれ、いじめられたこともあった。医者から原爆の放射線のせいだったと聞いたのは、しばらく後のことだった。当時はそんなことを、みじんも考えていなかった」。

朝日新聞『ナガサキノート』第3115回目(7)

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 私は講話原稿で、勲さんのおっしゃったとおりに、そしてこの「ナガサキノート」も大いに参考にしながらこのことを書いた。
 すると市の担当者からは「この症状が、放射線の影響であるという根拠を示してください」と返事が返ってきた。

 私は「ご本人もそうおっしゃっているし、体験記にもそう書いてあります」と返事をした。それでも向こうは「根拠」の一点張り。
 正直、その言い方も素直に受け入れられるようなものではなく(メールでのやりとりだったので余計にそうだったかもしれない)、まるで「勲さんの証言は嘘」とでも言われている感じになった。


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