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歌のシェフのおいしいお話(6)プレイボール!

プロ野球東京ヤクルトスワローズの長谷川宙輝(ひろき)投手がプロ初勝利を飾りました。おめでとう!!!!!!!!!!
全国大会とは無縁の高校の野球部からソフトバンクの育成選手としての3年間を経て、今シーズンからヤクルトに加入、今年2月に一軍デビュー、と着々と積み重ねてきて辿り着いたこの初勝利。長谷川の好投で9回表を三者凡退に抑えてからの味方の逆転サヨナラホームラン、阪神ファンには申し訳ないけれど清々しい勝ちっぷりです。まぁパリだと中継を見ることはできないから、いろいろな報道を見て構成した頭の中の再現VTRを見ての感想ですけれど…。

こんなに喜んでいるのはなぜかというと、長谷川投手、私の高校教師時代の教え子なんです。といっても週に1回、総合科の授業で顔を合わせるだけの非常勤講師のことなんて向こうは絶対忘れていると思いますが、そしてその小論文の授業が彼の活躍の役に立っているとはどう頑張っても全然思えませんが、勝手に応援していたので勝手に自慢します。うちの高校の野球部の環境からコツコツ努力してそこまで至るのがどんなに偉いことか。そのへんの甲子園常連校のエリートなんかには想像できない道のりなのだと思います。これからどんな選手になってゆくのか、それも勝手に楽しみにしています。どうぞ皆さまも応援よろしくお願いします^^

考えてみれば、フランスに来てから、日本のプロ野球中継が見られないどころではなくて、身の周りに野球が存在しません。調べたら「ディヴィジオン・アン」なるプロ野球リーグがあるにはあるらしいのですが、周りのおじさんたちも誰も野球の話をしていないし、新聞に勝敗が載ることもないし、定食屋のテレビに映し出されることもないし…なんだか寂しいといえば寂しい気もします。

野球は巨人ファンの祖父がよく家で見ていたのでルールや見どころは多少わかるという程度で、どのチームがパ・リーグなのかセ・リーグなのかもよく知らないレベルですが、それでもダルビッシュ有投手のことは昔から、高校時代から応援していました。何億も稼ぎ出すスタープレイヤーとペーペーのピアノ弾きでは状況が違いすぎて俄かには信じがたいことですが、同い年なんです。ということは、私が大学受験の年に、ダルビッシュ選手は最後の甲子園。東北高校のピッチャーとしての最後の登板、失点、彼自身が最後の打者となっての試合終了の瞬間のことをよく覚えています。こちとら夏休みは東大受験に向けて赤本を解いたり、英単語を覚えたり年号を覚えたり、実力アップのチャンスのはずですが、18歳の大澤はテレビのある居間に陣取って、問題集を広げながらも甲子園に釘付けになっていたのでした(ちなみに、なんと折悪くそれはアテネオリンピックの年でもありました。あんなにテレビにかじりついた夏休みは後にも先にもなかった…)。

その後しばらく、「ピアニストとして活躍して音楽雑誌に対談コーナーを持ち、ダルビッシュ選手を招く」というのを人生の目標にしていた時期があったのですが、紗栄子さんとさっさと結婚されたのでモチベーションが下がったのと、どんどん彼が偉大な選手になってしまって勝手に対談を夢見るのもさすがに申し訳ないほどになったので、公言するのをやめました(笑)。

今まで所謂体育会系の美学や根性とはほぼ無縁というか意識して近づかないようにしていたので(とかっこよく言ってみたものの要するに運動音痴)、スポーツについて記事の中で語る機会は今後もそれほど頻繁には訪れないと思いますが、野球の中には、瞬発力や体力だけの勝負ではない駆け引きの面白さ、バッテリーの妙、シーソーゲームや逆転サヨナラ、といった素人でも味わえる様々なドラマがあって、人生や心情を野球になぞらえる人が多いのも頷けます。

中でも白眉は宇多田ヒカル〈Play Ball〉。何も知らずに聞いても素敵な曲ですが、日本の夏、暑くて熱い甲子園を応援したことがある人には一層味わい深いのではないでしょうか。

今年の球児たちは春に続いて夏も甲子園大会中止でがっかりしていることでしょう。苦しい局面があっても挽回できるのが野球の醍醐味。これにめげずに彼らがそれぞれの長い野球人生を楽しんでくれますように…!

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