コロナ禍のなかの金沢暮らし@5月31日(日)「そうだ、どんぐり拾いに行こう」

人生で最も窮屈なひと月が終わりを迎えた。振りかえれば憂鬱な一カ月だった。確かに家での過ごし方は無数にあるし、実際自粛生活なんて言われなくてももとからひきこもり生活を楽しむ私だ。何の問題もなかった。そのはずだった。

しかし、ふたを開けてみればそれは「自主的に」選べたからだった。行動を制限することが求められ、必要に駆られて外出しているだけなのになんとなく居心地が悪かった。まして不要不急の散歩なら。ひとりで街を散歩すれば「必要なの?」というようなことを非難めいた口調で聞かれたこともある。説明することも億劫だった。「自粛疲れ」なんて私に関係ないと思っていたが、私も当事者から逃れることはできなかった。誤算である。

今日はフォーラスへ出掛けた。仕事着を買おうとしたが好みのものに出合えず断念。いまだ夏服に満足できぬまま6月に入る。人出は通常の土日に比べてやや少ないくらいか。だが、今日は店員さんも積極的に話しかけてきたので、2週間前の営業再開時とは雰囲気が少し変わったなと思う。

駅構内は相変わらず人が少なかった。いつもは柱の下に団体ツアーの旗がみえていたが、そうした姿があるはずもなく。それが戻るのは早くて7月だろうか。百番街りんともやや混んでいたので改札口にはもっと人がいるかと思ったが、バスの停留所にもほとんど人が並んでいないところをみると、やはり移動手段は車が大半だったのだろうか。

昨日はアルプラザ、今日フォーラスと2つの施設を比べると客層が明確にことなっていて面白かった。子ども連れはほとんど見かけず、男女同性ペアやグループが主で、私のようなピンがちょろちょろいたような感じ。別にこれくらいのことで動揺なんてしませんわよ、ええ。

夜、DMMで刀ステの無料配信を初めて視聴した。前田くんが出ると聞けば観るほかあるまい。本当は30分前には正座待機するはずが、思いのほか料理が楽しくて結果としてそれは5分前になってしまった。しかも、アカウントにログインできず大ピンチ。すべて準備できたのは配信1分前だった。人生何事もトラブル前提で余裕をもたねばなるまいと固く心に誓う。たぶん人生百回くらい同じことを誓っている。

観て早々に涙がでてきた。何で私はこれを無料で観ているんだろうと思うと悔しくて仕方なかった。無料配信はありがたいが、本来ならあるはずのない異常事態だ。国の方針によって、段階的に観劇等の活動自粛も解禁されることが決まっているが、最大でもキャパシティ50%もしくは5,000人。刀ステの場合、本来なら1公演1,000人収容のところ、解禁しても上限が500人となるのか。チケット戦争がさらに白熱するのもそうだが、これまで通りの方法だと舞台収入が半減する。チケットの売価設定やオンライン配信、グッズ等の販売や方法について、刀ステだけでなく各劇団で検討されていることだろう。続報を待ちたい。

配信コンテンツはリアルの価値を下げるという主張がある。私はまったく反対の立場で、むしろ配信コンテンツはリアルの価値を引き上げるのだろうと思っている。好きになってしまったが最後、平面映像で満足できるはずがない。なんとしても直接自分の目でみたいと願い、チケットを買うために奔走する。それは舞台に限った話ではなく、すべての芸術に言えることだ。

飲食店も同じで、秘蔵レシピを公開してもお店の味に近付くだけで全く同じにはならない。結局のところ、プロの経験や匙加減が重要だったのだと気付かされるし、そうなればやはり店に行くしかない。話が逸れた。

刀ステを観るのは初めてだったが大変良かった。特に殺陣が良かった。いまどきの時代劇ドラマでもあれほどのものは観れなくなった。これ以上どういうところが好きとか書き始めるとネタばれしかねないので控えるが。では、どれくらい好きかと言うと「そうだ、どんぐり拾いに行こう」と私に決意させるくらいには好きである。

とりあえず明日の出勤前にどんぐりの木を探しに行こうと思う。目星はついている。

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