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しんごちゃんが、しんごちゃんだった件

私はミーハーではない。
タレントさんを目にしても、「おお」と思うくらいだ。

そんな私もテンションが上がることがある。

なんのドラマだったか、スタジオでの撮影を終えた後のできごとだ。

夜の緑山スタジオは廊下もひんやりしていて、暗くて怖い。
足早に玄関ホールに向かっていたその時、後ろから二人の足音がついてくる。

そのうちの一人が、ずらっと並ぶ自販機のボタンを押しまくっていた。
歩きながら。

バシ、バシ、バシバシ!!

乾いた音が響く。

スタジオには深夜まで作業をする人のためにカップラーメンや、パンなどの自販機が並んでいる。
そのボタンを歩きながら押しまくっている。

呆れたもう一人が言う。

「そんな押したって何も出てきませんよ」

「そうかなあ〜! なんか出てきそうじゃん!?」

は!

この声は!!

しんごちゃんだ!!!

もちろん香取慎吾ではない、柳沢慎吾である。

思わず顔を確認した。

ぐお〜!!!慎吾ちゃんだ〜!!

一気にテンションがあがった。

おそらく慎吾ちゃんに会えたからではない。

慎吾ちゃんが、慎吾ちゃんそのものだったからだ。

カメラが回っていてもいなくても慎吾ちゃんはあのままだった!!

ものすごく感心し、興奮した。

おそらくこの業界にいて一番興奮した瞬間だった。

しかし、冷静になって考えてみた。
常にあのテンションなわけだ。
周囲は大変だろうなと、呆れ気味のマネージャーの声を思い出した。


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