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Old Harry Rocks

雨は降っていないものの、風が強そうだった。宿をチェックアウトして、荷物を車に積み、登山靴に履き替える。
新聞紙を詰め一日置いておいたので、随分良かったけれど、まだ湿っぽい。
今日はちょっと登るだけで、後は海岸まで降りて終点までビーチを歩くルート。ガイドブックには3時間半とある。
丘を登りきったところで振り返る。4泊したSwanageの街と弧を描いているビーチ。「あそこも歩いたんだなぁ。」と遠くの丘の稜線を目で辿る。

枯れた草が風になびいている中央に傘が10センチ以上ある茶色のきのこが生えている。ぬいぐるみの羊が乗っている
手のひらほどのキノコ発見。羊は怖がっています。

右手に海を見下ろしながら、なだらかな丘の上をドンドン歩く。風が少し強いぐらいで、快適だ。あっという間に、絶景で有名なOld Harry Rocksに到着。 昨日Sandbankでアイスクリームを食べながら遠くに見ていた白い岩が、眼下に並んでいる。

曇り空と海をバックに巨大な白い絶壁の岩がそそり立っている。その上に草が生えていて、人が一人立っている。
落ちないでほしい。

かなり絶壁で、写真を撮ろうにも風も強くて結構怖い。旦那さまの分と私の分と、こっちの角度とあっちの角度と、と何枚か撮ってみる。覗き込むと海の水がエメラルドグリーンで美しかった。
なだらかな草の丘を下っていくと、向かい側からかなり大勢の人たちが歩いてくる。近くのホテルの宿泊者かも。みんなのんびり散歩のような格好で、長距離を歩くような人は一カップルしか見なかった。少し行くとバス停のある道に一旦出た。近くの喫茶店で海を眺めながら、お茶。きっかり11時で「イレブンジーズだね」と旦那さまはニッコリ。

黒い木のテーブルに青灰色のコーヒーカップとソーサーにカフェラテが入っていて、その横にティッシュに半分くるまれた、オーツで出来たフラップジャックと、ぬいぐるみの羊が置いてある。背景に黄色と赤の縞模様の風よけと、そのうしろに海が見える。
葉っぱの模様が美しいカフェラテとフラップジャック。

この後はすぐ海岸に出てずっとビーチを歩いた。風が強くて結構寒い。それでも大勢の人が歩いていて、遅い夏休みを楽しんでいる家族連れも見かけた。途中ヌーディストビーチもあったが流石に寒すぎるようで、誰も日光浴してなかった。海岸線の角度が変わると波の音も変化し、風も更に強くなって、前から吹き付けてくるようになった。「最後の最後にコレか!」と思いながら身体を前のめりにしながら歩く。昨日バスから見た、終点を示す青いサインが遠くに確認できる距離まで来た。なんとなく感慨ひとしおである。

最初にSouthWestCoastPath歩いたのは、18年前、南コーンウォールのLand's Endの辺りだった。3月で天気が悪く、予定していたルートを短く切り上げた。泊まった宿は、もとは花を育てる倉庫だった建物を部屋に改造したもので、農家の敷地にあった。宿主からのメモ書きだけ置かれていて、顔を合わせる事は無かったが、朝起きると玄関先にカゴに入った朝食セットが置かれていて、ピクニックみたいで楽しかったのを覚えている。

SouthWestCoastPathのお陰で、普通だったら行かないような村や、乗らないようなバス路線を旅した。1980年代に、今まであったルートをつなげて全長630マイル(1008km)ものコースを作り、事故が起きないように常に管理されている。ナショナルトラストが管理しているところもあれば、個人の農家の土地もある。崖崩れがあれば、新しいルートを開き、階段や橋も直されて、安心して通れるようになっている。多くの人々の努力のお陰で私のような旅行者が楽しめているわけである。
本当に感謝である。

波の風の音を聴きながら、前へ前へと進む。昨日バスごと乗ったフェリーも見える。旦那さまと一緒に青いサインに向かう。ご夫婦らしき人たちがサインの横にいた。彼らも全ルートを歩き切ったところだとか。お互いの成果を褒めあって、写真も撮りあった。結婚記念日をお祝いするような気分だった。二人でやってきた活動の、大きな節目になった。

曇り空とビーチを背景に、鉄製の青いモニュメントが建っている。船の帆を模したもので、パイプを真ん中に両側2つ、切り抜きの細工がされたパネルが付いている。パネルのデザインは海鳥や灯台やイルカなど、ルートにちなんだもので、下にSouth West Coast Pathと切り抜かれている。
終点のサイン

またバスに乗り、車まで戻って帰宅。汚れた服が洗濯機でぐるーんぐるーん洗われている音を聞きながら、夕飯を食べる。旦那さまは小さいスパークリングワインも開けた。お疲れ様ー!!

客間の壁にイギリス南西部の地図がある。ピンクのペンで歩いてきた所をチョコチョコ塗っていた。今日、最後のところにペン入れした。ところどころ色褪せてしまっているピンクの線が、私と旦那さまの歴史を見るようで嬉しい。


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