[weryfikacja 検証47] authentic(本物の) - ノクターン第2版
ナショナル・エディションの「原資料に関する解説(要約)」では「はじめに」で、この解説はいったいどういうものなのかを整理して簡潔に説明しています。 しかし、この要(かなめ)となる部分の訳に問題が多い。これでは核心となる事柄をストレートに理解できません。
47.
原資料に関する解説
はじめに
authentic とは「本物である」ということ
autentyczny/authentic/オーセンティック。 これはナショナル・エディションでは、その原資料が「本物かどうか」という時に使う言葉です。 英和辞典に「真正の、本物の」「信頼すべき」とあるとおりです(上の画像でおわかりのように、ポーランド語の形容詞は格変化します)。
「はじめに」で2回あらわれる autentyczny/authentic/オーセンティック という言葉。ここでは1か所目を見ましょう。
ノクターン日本語版 第2版では「オーセンティックな原資料」が「ショパンが関与した複数の原資料」と訳されています。この訳のどこが問題なのか。
ショパンが “関与”?
「関与」という言葉は、例えば「その事件に関与」「国政に関与」などといった場合に使われます。
例えば「ショパンが関与した原資料中、最も時期の遅いフランス初版を基礎とする」などと言うことはよくあります。 関わったものの中で一番遅い時期の、仏初版を基礎とします、と。
「ショパンさん、あなたは自筆譜に関与したの?」と聞く人はいない
「ショパンが関与した」という訳が問題なのは、自筆譜(自筆譜なしに初版はあり得ない)への意識が欠けているからです。
「ショパンさん、あなたは自筆譜に関与しましたか?」と聞く人はいません。 「ショパンが関与した複数の原資料(…)」の部分を読むと、私たちはまず筆写譜や初版に意識が行きます。 自筆譜への意識を逸らされてしまうのです。
authentic とは本物であるということです。
オーセンティックな原資料
自筆譜・筆写譜・初版などを原資料と言います。 authentic/オーセンティックな原資料とは、自筆譜・筆写譜・ショパンの校正がおこなわれた初版などを指します。
(例えばショパンの没後に出た1860年代の版は、ショパンが目を通すことは当然不可能でしたから authentic な原資料とは言えません。)
Special thanks: Prof.Paweł Kamiński, PWM
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