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【北欧図書館の仕掛け7】ゆるゆるな書架はだめですか?

この写真はフィンランド・ヘルシンキの公共図書館の閲覧室を撮影したもの。北欧らしい照明デザインや読書用の椅子にも目を奪われるが、今回のテーマは書架である。

書架にはどこもかしこもゆとりがある(Pasilan kirjasto, フィンランド)

一見してわかるのは書架が<スキスキ>だということ。書架のゆるさは北欧公共図書館の特徴だ。北欧の図書館に行くと「なんだか本が少ないなあ」といつも思う。実際、図書館から図書の数がどんどん少なくなっていっている。

図書館は本を置くところなのに?との疑問が湧いてくるかもしれない。だが現在、公共図書館は読書のための専用空間から、本を含めたあらゆるメディアにアクセスし文化活動を楽しむ多目的空間になっている。利用者に図書館でいろいろな活動をしてもらおうとすると、相対的に図書館から本を減らす必要が出てくるのだ。

リノベーションにあたって、すでに読まれなくなった大量の本を廃棄したとか、新館設立の設計段階で書架の数を大幅に減らしたという話もよく耳にする。「本をあまり置かない」ことは、21世紀の北欧公共図書館の特徴といってよいだろう。

書架をゆるゆるにする効果は本当にいろいろある。書架にゆとりがあると、心に余裕を持って本を選ぶことができるような気がする。ぎっしり詰め込まれた書架はなんだか威圧的だ。一冊だけ取ろうとしたら抜けなくて周囲の本ごと抜けてしまうかもしれない。自転車置き場と同じ原理。ぎゅうぎゅうに詰め込まれた自転車置き場で、途方に暮れた体験はないだろうか? 

デンマークの児童室の書架

ゆるゆるの本棚にするためには、ある種の「心構え」が必要だ。それは多少(というか、かなり)書架が乱れても気にしないこと。このおおらかな気持ちがゆるゆるな本棚づくりにとって一番大切ではないかと思う。実際に北欧の公共図書館では、書架の棚の中で本が倒れているのを目にすることが割と普通にある。どこの図書館に行っても書架の中に空いたスペースがたくさんある。そして空いた場所には、本当に重要な情報を仕込んだりするのだ!

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