【おうちで台湾ごはん】vol.2:大根もち(蘿蔔糕)を作った
「大根もち(蘿蔔糕)」を作った。日本で買える冷凍のもの(台湾製)を試したこともあるが、台湾で食べたのほどおいしくなかったからだ。台湾では家庭で普通に作られる料理でもあり、お店で簡単に買うこともできる。
■台湾レシピのアレンジが必要な理由
分量がハンパないから。台湾のレシピは、1回で作る量がかなり多いことが多い。例えば、「鶏肉の○○のレシピ」で検索して、1行目に
「鶏:1羽」
とか書いてあるのはザラだ。(日本じゃ骨付き鶏もも肉だってクリスマス前くらいしかスーパーに並ばないよ・・・。)
台湾には、日本と同じようなスーパーの他に「伝統市場」と呼ばれる昔ながらの市場がある。肉の売り方はなんともダイナミックだ。
ので、台湾レシピの材料はだいたいそのまま使えず、我が家に合うように割り算することが多い。ので、それをメモしておく必要がある。(そして、記録ついでに公開しちゃおうという訳だ。)
■大根もちのキモは「在来米」なのでおとなしく買う
日本で普通に使うのは白ごはん用のうるち米(粳米)ともち米(糯米)の2種類だ。各種米粉もこの2種類からできている(白玉粉:糯米/もち粉:糯米/上新粉:粳米/だんご粉:粳米+糯米)。
しかし、大根もち(蘿蔔糕)はこれらの米粉では作れない(作ってもいいけど台湾のとはちょっと違うものになる)。箸でほろっと切れる、粘りが少ない大根もちになるのは「在来米粉」を使っているからだ。
通称「在来米」、中国語で「秈米」というこの米の正体は「インディカ米」、つまり長粒種の米だ。タイのジャスミン米やインドのバスマティ米もインディカ米に分類され、うるち米より粘りが少ない。
日本で普通に入手できるインディカ米はタイのジャスミン米くらいしかないが、台湾の秈米とは品種が異なり、独特の香りがある(バスマティ米も同様)。だから、日本でジャスミン米を買ってがんばって粉にしたとしても「在来米粉」とは風味が違ってしまう。ていうか米の粒を滑らかな粉に挽くのは相当面倒くさいと思う。
台湾のレシピで、うるち米粉(粳米粉)で作るものも「ごく稀に」出てくるので、それに従うことにするなら上新粉で代用できる。私はおとなしく台湾の「在来米粉」を買うことにした。(日本のネット通販でも買えますよ)
■大根もちに何を入れるか問題
「大根もち(蘿蔔糕)」は別に台湾だけのものではない。広東料理店にも大根もちはあるし、漢民族の中で広く食べられている料理だ。
私が日本で買った台湾製冷凍大根もちに、具は入っていなかった。確かに、台湾の食堂でよく食べていた大根もちは「プレーン」だった。様々な情報を総合すると、
・台湾式大根もち:具なし
・広東式大根もち:具入り
ということらしいのだが、レシピとしては台湾でも具入りのものがたくさん紹介されている。ので、ここはもう好みで良いと思う。
大根もちに入れる具は、
・豚ひき肉
・揚げエシャロット
・干しエビ
・干し椎茸
がよく紹介されている。(広東料理店のメニューでは香港式ソーセージとかホタテ貝柱入りのものもある。豪華!)
これまでに色々な具のパターンで作ってみたが、ひき肉は食感に変化が出るので気に入っている。
■大根もちの作り方の基本の流れ
大根もちを作る大まかな流れはこう。口に入るまで一定の時間がかかるが、難しい作業はない。
①大根を細かくする
②煮込む
③米粉を水で溶いたものを加える
④型に入れて蒸す
⑤冷蔵庫で冷やす
⑥切って焼いて食べる
(※具ありの場合は①の前に具を炒め、そこに大根を加える)
■大根もちの材料(パウンドケーキ型1本分)
今回ベースにしたレシピには「大根:1.5kg」と書いてあった。いやいや、そんな売るほどは作らない。
うちにあるパウンドケーキ型(耐熱ガラス製/内寸:192x85x深さ60mm/容量:880 ml)1個分の分量はこちら。(ただし具を全部入りにするとあふれる)複数のレシピを組み合わせて、今はこの内容に落ち着いている。
大根:300g(厚めに皮を剥く)
水:250cc
[具]※組み合わせ自由、なくても良い
・豚ひき肉 50g
・揚げエシャロット(蔥油酥) 大さじ1弱
・干しエビ 大さじ1/2
・干しシイタケ 1~2個(戻して軸を取る)
[水溶き米粉(粉漿)]
在来米粉 150g
太白粉(片栗粉で代用) 大さじ1
塩 小さじ1/8(ひとつまみ)
水 200cc
※太白粉を入れるのは、厳密には広東式。なくても良い。
※在来米粉:大根= 1:2 にするのが基本的な分量目安。
■大根は「しりしり」する
沖縄出身の友人が台湾に来たとき「なんだか実家に帰ってきたみたい!」としきりに感動していた。食材のラインナップや市場の雰囲気が沖縄によく似ているんだそうだ。さすがお隣。
沖縄料理「にんじんしりしり」は、細く短くスライスしたにんじんを炒めるが、それを作る「しりしり器」という専用のおろし金がある。一般的なスライサーの「千切り」モードよりも太く仕上がるもので、「にんじんしりしり」はこの太さがベストだ。
大根もちのレシピを調べていたら、大根を細かくするのに台湾で使われている道具は、
「しりしり器」とまったく同じ
ものだった。うん、さすがお隣。
大根は、大根おろしにすると繊維が粉々になって水分がビシャビシャ出てしまう。大根もちを作るなら「しりしり」がいい。スライサーに太千切りのカッターがあればそれでOKだ。大根はにんじんより柔らかいので「しりしり」しやすくて楽しい。上に書いた300gならそんなに時間はかからない。
■大根もちを作る手順
【0】具を入れる場合:材料をみじん切りにして炒める
【1】大根(しりしり)と水を加えて10分ほど煮る
大根は、厚めに皮を剥いた後「しりしり」にしておく。フライパンに大根と水を入れて煮る。仕上がりに大根の食感を残したければ、煮込み時間はもう少し短くしてもいいかも。(この時は、ひき肉・干しエビ・エシャロットが入っている。)
【2】米粉を水に溶いたものを加えて、ほろほろになるまで加熱する
水溶き米粉は、加えた後すぐに固まってくる。混ぜるのに結構力がいる。焦がさないよう注意。
【3】油を薄く塗った型に詰める
型の内側に薄くサラダ油を塗っておくと後で出しやすい。中に隙間ができないように、少しずつ押し込むような感じで型に詰めていく。
【4】蒸す(50~60分)
私は台湾の電鍋を使っているが、蒸せれば何でもいい。蒸気が十分上がってから1時間程度蒸す。蒸すと少しだけかさが増す。
【5】粗熱を取った後、冷蔵庫で冷やす
蒸し上がったばかりのものはふわふわで、かなり柔らかい。でも冷やすと固まるので大丈夫。粗熱が取れるまで結構時間がかかる。(粗熱が取れた後に型から出したところ。この写真だと完全に広東式大根もちだなあ。)
【6】適当な大きさに切り、焼いて食べる
好きな大きさ・厚さに切ってフライパンで焼く。こんがり焦げ目がついたらできあがり。このレシピだと塩気はないので、台湾とろみ醤油(醬油膏)をかけて食べる。
▼「醬油膏」については前回書いた文の中に出てきます。一応自作も可能。
現在台湾で白ごはんとして食べられているのは、日本と同じうるち米(粳米)だ。(台湾の稲作には歴史的に日本が深く関わっている。そもそも「在来米」という名前自体も日本人が名づけたものだ。)
でも、この大根もち(蘿蔔糕)や碗粿、米苔目、米粉(ビーフン)、粄條、肉圓、發粿など伝統的な料理では「在来米粉」が欠かせない。麺をいちから作るのはさすがにやらないので、次は碗粿(ワーグイ:水溶き米粉をお椀に入れ、上に台湾式肉そぼろなどを載せて蒸したたもの。台南の名物)に挑戦してみようかなと思っている。