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台湾一のおてんば女神はピンクのスーパーカーでかっ飛ばす [白沙屯媽祖徒歩進香]

7月5日深夜、白沙屯拱天宮の媽祖(まそ)さまが乗ったお神輿が、雲林県北港鎮の媽祖廟・朝天宮に向けて出発しました。往復歩行距離は約400kmにも及ぶ、台湾で最も長距離の媽祖巡礼「白沙屯媽祖徒歩進香」です。神輿には多くの信徒が付き従い、大行列となります。

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▲白沙屯拱天宮から北港朝天宮まで(でもまっすぐは行かない)

昨年・一昨年は現地にいた私ですが、今年は泣く泣くネット参戦。昼夜を問わずライブ配信に張りつき、時には感動の涙を流し、お神輿の様子を喜々として語る私のことを、
家族はまったく理解してくれません
むむぅ、どうやってわかってもらえばいいんだ。

【1】「媽祖(まそ)」さまは台湾の最強女神

台湾には1万を超えるお寺や廟があり、道教廟が最多を占めます。道教にはたくさん神様がいて、「媽祖(天上聖母)」は台湾でトップクラスの人気を誇る女神です。

「媽祖(まそ)」さまは、よく「海(航海)の守護神」と説明されます。由来としてはそうです。でも現在は、つらいとき・苦しいときはとにかく「媽祖さま助けて!」とオールマイティに頼れる「台湾最強の女神」です。その愛されっぷりは、こんなイラスト集が出るほど。

最強天后封面

▲『最強天后:Oh, my Goddess!』
https://www.books.com.tw/products/0010704588
作者:蚩尤/大辣出版

廟にある神像を見ているとぴんときませんが、実は
媽祖さまはアラサー女子
なんです。
(※媽祖さまは宋代に実在した女性で、神となった時は30歳手前だったというのが定説。)

媽祖さま

▲出発を待つ白沙屯媽祖さま。写真は白沙屯拱天宮の公式Facebookライブ配信より

【2】媽祖さまはある意味「タチコマ」

たくさんの廟で祀られている媽祖さまは、当たり前ですが全部同じ「媽祖」という神様です。でも、それぞれの廟で異なる歴史やエピソードが積み重なることで、無礼を承知で例えるなら『攻殻機動隊』の「タチコマ」のように「個性」が生じています

同じように「巡礼」する媽祖さまで有名なのが、この前紹介した台中・大甲鎮瀾宮の媽祖さま。8人で担ぐ神輿は大きく豪華で、従者の行列ラインナップも「フルコース」です。スケジュールに従って多くの廟を巡っていくその巡礼は、まさに正統派・王道といったところ。

2019大甲媽祖さま日程詳細・行き

▲大甲媽祖さまの巡礼スケジュール表(2019年・往路のみ)。訪問予定の廟の名前がぎっしり

一方、白沙屯媽祖さまは、
●お神輿は4人で担ぐ機動力重視の小型サイズ
●決まっているスケジュールは出発・目的地到着・目的地出発・帰着(及び重要儀式)のみ

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▲白沙屯媽祖さまの日程表(2020年)。これ以外の情報は一切なし
▼白沙屯媽祖さまのお神輿は、前2人+後ろ2人の小型サイズ

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大甲媽祖さまが「タスクぎちぎちの大規模公式出張」だとするなら、白沙屯媽祖さまは「フリープランの個人ゲリラ出張」。(ただし、どちらにもすさまじい数の追っかけ=信徒がいます。)

【3】お神輿を「操る」のは媽祖さま自身

白沙屯媽祖さまの「巡礼」では、
お神輿の行き先は「媽祖さま自身」が決めます。

これが白沙屯媽祖さまの「追っかけ」をするのが楽しく・同時に大変な理由です。

白沙屯媽祖さまのお神輿は、前後左右に大きく揺れることがあります。これは「人間が神輿を揺らしている」のではなくて、神輿が「勝手に動く」ことによるものです。これはまあ信じるか信じないかの話ですが、台湾の神様は、自身のパワーでお神輿を動かすことができます。

白沙屯媽祖さまのお神輿の担ぎ手は、交差点にさしかかると歩を緩めます。するとお神輿がゆらゆら揺れ始め、肩に担いだ棒から伝わる力でどちらに行くかが示され、そちらに進むことになります。

「行轎」や「踩轎」と呼ばれるこの「神様自身の意思表示」が、白沙屯媽祖徒歩進香の最大の見どころです。「行轎」はかなり強烈なパワーを持っていて、まっすぐ歩いていたのが急に引き戻されたり、突然方向転換したりする時には、むしろ担ぎ手の人が引きずられて吹っ飛ばされそうな勢いになります(これが不思議で面白いところです)。

【4】全てサプライズ、好きなように進む白沙屯媽祖さま

行程が決まっていないので、白沙屯媽祖さまの立ち寄る先は常に「サプライズ」。沿道各地の多数の廟を着々と回っていく大甲媽祖さまに対し、白沙屯媽祖さまはその場の気分で好きなようにルートを決めます。なので、
急に路地裏の細道に突入していったり、
スーパーの店内を一周してみたり、
一般人のお宅に一泊したり、
学校の校庭に乱入したり、
高速道路に入っちゃったり(歩行者を多数引き連れて)、

挙げ句の果てには
橋を横目に川の中にザブザブ入っていったり
します。

今日(7月5日)は家具の展示販売場に入って行って、でもお神輿が通れるスペースはなかなかないので、店員さんやお付きの人たちが慌てて椅子やテーブルをどかしていました。

また、白沙屯媽祖さまは「子供好き」で知られていて、結構な頻度で学校の校庭に入ってきます。でも神様だから誰も怒らないし、むしろご加護がいただけるので大歓迎。

【5】おてんば女神の「ピンクのスーパーカー」

そもそも、白沙屯媽祖さまのお神輿は、普通モードで進んでいても大人が小走りするくらいのスピードが出ます。担ぎ手は1時間交代ですが、全然疲れることはないんだそうで、むしろ神様のパワーで動かされている感じなんだそう。(担ぎ手グループは、担いでいない時もずっとお神輿のそばで歩いています。)

白沙屯媽祖さまのお神輿の屋根は、雨が降った時のためにかわいらしいピンク色のビニールがかぶせられています。なので、台湾では白沙屯媽祖さまのお神輿のことを「ピンクのスーパーカー(粉紅超跑)」と呼んでいます。

お神輿

ざっくりライトに書くと、
超速で、どこに行っちゃうかわからないピンクのスーパーカーを駆るおてんばなアラサーの女神さまと、それを必死で追いかけるたくさんのファンたちの群れ。それが「白沙屯媽祖徒歩進香」です。

大甲媽祖さまとは違い、事前に宿泊地すら手配できない白沙屯媽祖さまを追いかけるのは、ファン(信徒)にとってかなりの試練です。(大甲媽祖さま同様「お神輿の現在位置表示GPSアプリ」はあります。)

しかし、難易度が高い分、そこに付いていくのは「ガチ」のファン。媽祖さま好きの精鋭たちです。今では私はその末席に身を置いています。

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▲昨年は正式に申込みをし、巡礼グッズをゲットの上参加しました。今年も行くつもりだったのに・・・

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