最適な甘さ
「どうしたの?」
「だから、
それで、
何が言いたいの?」
と君に言ってしまってから、しまったと思う。
いつもは心の奥に留めておくのだが、今日はなんだか余裕がない。
「どうかしている」
「うん、なんだか別の人みたい」
君は俺を何だと思っているのか。昨夜の甘い時間すら馬鹿馬鹿しく思えてくる。そろそろかな。
「あ、またアレのこと考えているでしょ」
こらえる。同じ言葉を言いたくない。このようなやり取りになってしまうのは、もう気持ちがないからだろう。見せかけの甘さに惹かれて後悔することを繰り返している。花とバニラの香り。
「まだ時間あるの?」
まとわりつくな。その匂いに酔えるのは何でもいいから食いたいときだけだ。
「ごめん、もうないから。はい、これ、今までの気持ち。終わりにしてほしい」
「うん、ありがとう。こんなにいいの?」
苦笑いしながら、バイバイした。
たぶん彼女はしめたと思っている。次の遊びには十分すぎる数だ。
「どうしたの?」
残りの金貨を数えようと腰に手をやって、その柔らかさにひいた。
「っごめん」
「もう、
だから、
なんで言葉がたりないの?」
目を見開いて君を見る。レモンのような香り。君のどの部分を触ってしまったのかドキドキしながら、腰に金貨がないことを確かめる。
「夢落ちでよかった。君は僕にとって最適な甘さみたいだ」
まるで夢の中の俺が憑依したような口調に、君が驚いた顔をする。少し頬を染めた君を見て、時間はたっぷりあると思った。
2024/5/13