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リスボンの飲食業界が今直面している危機

何年も続いてきたお店が、経営難で閉めることになった時、よくSNSや他のネットニュースで話題になることはあるけど、去年から今年にかけてはそれがさらに増えてきているような気がする。

今年、閉まったとニュースになったレストランは、カウンターでタコスのコースメニューを出す、グルメの間ではとても評判の良かった小さな店、と、アルファマという旧市街地で人気があったモダンポルトガル料理の、これもこじんまりしたお店。この2店舗が経営難で閉まることになり、この2店舗のシェフたちや、他のフードライターなどが声をあげたことで、このリスボンの異常な飲食業界の移り変わりや街の驚くべき家賃の上昇の話題がさらに注目され始めてきているのではないかと思う。

リスボンは、コロナ以降、本当に家賃がものすごい勢いで上がっている。外国からの移住者もめちゃくちゃ増えているので、それも家賃が上がる理由の一つかも知れない。私たちが作った店も、数年前に知人に譲った後、大家がべらぼうな家賃にさらに値上げしようとして、たった2年で閉まってしまった。

昔ながらの値段で昔ながらの食事を出す食堂は少しずつ消えていき、代わりに観光客が喜びそうな、写真映えするモダンポルトガル料理などを出す店が圧倒的に増えた。ランチを出していたオールドファッションのカフェも、移民がオーナーに変わってゆき、もちろんメニューも質も変わっていく。かつて毎日昼ご飯は外食する文化があったポルトガル人の習慣も、今ではお弁当を職場に持って行く人が増えているようだ。

飲食業というのは、儲かる業種ではないことは周知の事実。特に個人店はとても厳しい。税金や材料のコストはどんどん上がる上に、基本給も上がっているから、メニューの値段も上げるしか、生き延びていく方法がない。
コロナの時に、少しでも利益が上がるようにと、店の前に出すことを許され始めたテラス席も、今は駐車場を増やしたいから今月中にテラスを撤廃しろ、さもないと罰金だと行政に言い渡された地域があり、それが話題になったのもつい最近。

 今はリスボンでの外食は、日本よりもずっと高い。今年日本に旅行した私の周りのポルトガル人たちは、皆声をそろえて「日本はなにもかも安くて驚いた!今はポルトガルではあんな値段で飲み食いはもうできない。」と言う。昔は日本は高いからなかなか行けない夢の国だったけれども、今はもうそうではないらしい。

驚くことに、ポルトガルは観光客の人数は年々増えている。2023年に比べると、今年は今のところ6%増えているそうだ。なのに、個人店のお客は減っているそうだ。キラキラした資本のあるゴージャスな店はいつも満席なのに、個人店はどんどん売上が落ちていて、閉店に追い込まれている。私の印象では、ちょっと今風にアレンジしたポルトガル料理で、ナチュラルワインなども置いていて、値段もリーズナブルな店は若者や外国人に人気で客で溢れているけど(味が結構濃いので個人的にはリピートしないタイプの店だ)、こぢんまりとした店でコースメニューなどを出す店や、昔ながらの食堂などは、苦労しているところが多いように感じる。

地元の人たちも、家賃が払えないから郊外へ引っ越す人も多く、夜飲み歩いたり、外食を楽しむ時間がなくなってきた。リスボンに残る人々も、節約を考えるために、やっぱり外食に躊躇する。そんな現状だそうだ。

国はいくつかの支援策を講じているけれど、これらの措置がどれくらい効果があるかはまだ懸念が残るらしい。

私たちがリスボンに住んでいた時に通っていた、飾らないシンプルなポルトガル料理を出していたあの食堂、まだあるだろうか?今度また食べに行かなくちゃ。

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