かくれんぼ
今朝、乾燥機から取り出した洗濯物。
あったかくて、ふわっふわ。
この感覚は…
子供たちがまだ幼い頃、天日干しして取り込んだ布団に顔をうずめ、
「おひさまの匂いがするね〜」
と言っていた、幸せな時間を思い出させた。
*****
「おかあさん、かくれんぼしよう!じゃんけんぽん!」
私の鬼。
小高い丘の上に登って周りを見渡すと、隠れたはずの子供たちの姿がすぐに現れる。
次は、子供たちが鬼。
「じゃ、次はおかあさんが隠れてね!いーち・にーい・さーん・しーい…もーいいかい?」
太い木の陰に隠れている私の姿は、子どもたちが小高い丘に登ってもすぐには見つけられない。
「おかあさーん、どこ?」「おかあさーん!」
5歳と3歳の幼い2人が、私の姿を探す。
「おかあさーん!」
いくら探しても見つからない。
いつのまにか、ひっそりとした公園。
遠くでカラスの鳴く声が聞こえる。
可笑しさをこらえながら、息を潜めて隠れる私。
「おかあさーん…」
私を呼ぶ声も、だんだん不安げに小さくなっていく。
お姉ちゃんの後ろを、トボトボとついて歩く弟。
2人は探すのを諦めたのか、しょんぼりした表情でブランコに腰をかける。目で私の姿を探しながら。
「どうして見つけてくれないの?もう、虫に刺されちゃったよ」
しびれを切らして出て行く私。
「ね、お母さん、一緒にブランコ乗ろう!」
私の膝に乗る娘。いつのまにこんなに重くなったんだろう。
夕方の風が気持ちいい。
私は、夕日に向かって大きくブランコを漕いだ。
「さ、もうおうちに帰ろう。おふろに入ってご飯食べなきゃね」
3人で手をつないで家まで歩いた。
この子たちは、この日のことを覚えていてくれるのだろうか。
私は、忘れない。
夏の終わりに、2人が一生懸命私の姿を探してくれた日のことを。
この夕日のように、ちょっぴり眩しくてせつないひとときがあった日のことを。
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