
「職業」「肩書き」のこだわりを捨てたら、自分の人生を取り戻せた話
私が大学を卒業して看護師になってから、早10数年が経ちました。
途中で大学院に行ってスポーツ医科学を専門的に学んでからは、医療の中でも分野を絞ってさまざまな経験を積んできました。
大学院に行くことは、当時20代半ばだった自分にとっては「清水の舞台から飛び降りる」ほどの勇気とお金がかかったし、わざわざアメリカのアスレティックトレーナー資格(BOC-ATC)を取り、別にそれがないと仕事ができないというわけでもないのに、今でも毎年お金を払って勉強して資格を維持しています。
そんなこんなの経緯なので、最近まではやっぱり「看護師として」あるいは「アスレティックトレーナーとして」、「せっかく〇〇だから」、というような考えにどうしてもこだわってしまっていたように思います。
こだわっていたというか、もう無意識に「そういうものだ」と勝手に決めつけていた、というか。
だってめっちゃお金と労力がかかったし(2回目)、自分なりに考えて軌道修正しつつ積み重ねてきたキャリアの方向性にも特に迷ってなかったし、そういう流れで行こうとするのがまぁ普通っちゃ普通ですよね。
でも、ここ数年で、そういうのももうどうでもいいなという結論に達しました。
理由は大きく2つあります。
一つは、自分の持っている「強み」を過不足なくうまいこと活かせるような、ちょうどいいポジションなんて都合よく用意されていないから。
そしてもう一つは、仕事の充実だけが人生の豊かさだけではないことに気づいたからです。
スキルが個性的すぎる問題
たとえば「看護師経験5年以上」&「米国アスレティックトレーナー有資格者」の両方が求められている求人とか、そもそもないです。
そんな奴めったにいねーよ!って話ですよ。
さらに私の場合、文章書いたりデザイン作ったり、広報やクリエイティブ的な仕事もしたいと思っていたので、より、ないわけですよ。そんなスキルが全部求められている仕事なんて。あるわけないじゃん。どんな仕事だよ。わけわかんないですよね。
これは、”できれば石橋を補強して渡りたい"無難・保守派の私が、「もういっそ個人事業主になるか」って決断できた大きな理由でもあります。
そう、誰も看護師として採用した人にアスレティックトレーナーのスキルなんて求めてないのです。
これまでの経験で、わかりやすく役立ったのは英語くらいでしょうか。でも自分的には「英語力を売っていきたい!」みたいな気持ちは特にありませんでした。というか、そんな大して英語がうまいわけでもないし。前の職場では外国人の患者さんがすごく多かったので確かに役立ちましたが、そこを医師から評価していただいて「コイツは英語ペラペラだから!」とかって紹介されるのは、正直気まずさしかなかったです笑。
私がアメリカで学んできたのは「語学」じゃないんだけどなぁー。
まぁ、医療機関で働く看護師の仕事としては、アスレティックトレーニングの知見なんてなかなか役に立てられないということでしょう。
もちろん、デザインソフトを使えるかどうかというのも。
仕事だけが人生じゃない問題
そしてこんなの当たり前なんですが、もう文字通りなんですよ。
これは今の年齢になったから、より実感するようになったのもあるかもしれません。
上記の通り、正社員として雇用されている「本業」では自分のやりたいことやできることに満足に取り組める環境はどこにもないわけなので、じゃあ「副業」として個人的に活動していくかという考えになりました。
そして実際、少しずつですが個人的に報酬をいただいて「医療機関の看護師」以外の仕事に取り組むようになりました。それはとてもありがたく、やりがいと成長を感じ、充実していました。
でも、あるときそれではずっとはやっていけないということがわかりました。
週5でフルタイムで出勤して、残りの時間で副業をするとなると、もうやるべきことで毎日がいっぱいいっぱいなのです。
ときどき誰かと遊ぶ予定くらいは入れられますが、自分一人でなんとなくやりたいこととか、観たい映画とか、行きたいところとか、そういう「興味はあるけど今すぐ予定に入れなくてもいいこと」が全く実現できなくなりました。
あっという間に月日が過ぎ去っていき、やりたいことよりやらなければいけないことで頭がいっぱいでだんだん気持ちにも余裕がなくなってしまい、いつもなんとなく焦っていたり、不安だったり、イライラしている自分がとても嫌でした。
その当時は色々あって、仕事をしつつデザインの勉強をしたり転職活動をしたりしながら、「自分が本当に望んでいることは?」「自分の思う豊かな生活とは?」など、目先のことだけでなく長期的な目線で人生について考えることが増えました。
「仕事は間違いなく一番やりたいことだし、もはや趣味みたいもんでしょ」なんて思っていた時期もありましたが、それは違いますw
やっぱり仕事は仕事だし、趣味や楽しむことって、もっと個人的で気楽なものでいいはずです。
それに、自分の「好き」や「フェチ」をしっかり味わって暮らしていないようでは、やっぱりデザインにせよ何にせよ、いいクリエイティブなんて生み出せないよなと気づきました。今思えば、忙しくしすぎていた頃の私は「感性」がちょっと退化してきていました。怖い。
そんなわけで、今は自分が好きだと思うこと、感動すること、素敵だと思うことなどをちゃんと楽しむ生活と、仕事を頑張ることのいいバランスを見つけて暮らすことをとても大事にしています。
まとめ
立派な経歴や肩書き、実績があって歩んできている人は本当に素晴らしいと思います。ちょっと憧れますよね。
でも30代半ばにもなると、「すごい!」などという"突発的な感情の揺れ"だけで、自分がこの先どうしていくかなんて決めるべきではないとも思います。
やっぱりここまで来ると、「他者を通して見る世界」ではなく「自分の内なる声」の方にしっかり耳を傾けないと、側から見るとわりとうまくいってる感じでも本人は何か満たされないモヤモヤを抱えて悩んでいる、みたいなことが起こりかねないのです。
私は全然アウトローな性質でもないし、どちらかというと無難を好むタイプの人間なので、普通に正社員として働いて普通に暮らしていくのがいいと思っていました。そして実際、そうやって暮らしてきました。決して無理ではなかったです。
でも、そのままでは私の心からの望みや熱意をしっかり大事にしてあげられないなと感じたので、もうなんか職業とか、肩書とか、「ちゃんとしててわかりやすい感じ」にこだわらなくてもいいやって思い至りました。
もしかしたら、他人から見たら正社員をやめて所属先も後ろ盾もない個人事業主になるなんて、「ゆるく働きたいのかな」「自分探ししてるのかな」なんて思われたりするかもしれませんが・・・まぁ、関係ない人にどう思われようと、何でもいいです。「最近アイツは何やってんだ」と思ってる人もいるかもしれません。でもいいんです。興味があったらブログ見てくれ。
自分が事業主になることで、自分好みにカスタマイズされた仕事内容や業務を柔軟に選ぶことができるようになりました。これはもはや私の中での「働き方革命」です。その喜びと興奮に比べたら、「ちゃんとしてる感」がなくなったことなんてどーーーーーでもいいです。
「職業」や「肩書き」へのこだわりを手放して、「いや、もうなんでもいいや」の精神に振り切ってからは、モヤモヤしている時間が減って精神的なコンディションがいい時間が激増しました。
前より自分のことが好きになったし、より自信もついたし、何よりかつての自分にもともと備わっていたような、純粋な好奇心や気楽さを取り戻してきたのがとても嬉しいです。
仕事を頑張ることでやりたいことのスキルが上がり、スキルが上がるからよりやりたいことができる機会がやってくる。良いサイクルです。
30代後半以降は、このスタンスでコツコツ頑張っていこうと思っています。