「オッサンの放物線」 #19オッサン二人のインソムニア その1 食祭市場
~連続しょうもな小説~
「オッサンの放物線」 第十九話 オッサン二人のインソムニア その1 食祭市場
〜この物語はフィクションであり、着地点は無い〜
2023年8月5日
今回の話は長い。おそらく妖怪も出てくる暇がないだろう。
朝6時。いつもの出勤時間に家を出る。
でも今日は仕事ではない。ランニングチーム「サバ缶」の「兄やん」と旅行に行くのだ。
待ち合わせのコンビニへ車を走らせる。
最近アニメにハマっている。
久しぶりのダダハマりだ。
原作コミックも全巻揃えて、実写映画も観に行った。全部が素晴らしい。
今回兄やんと二人、石川県へ「聖地巡礼」に行くのだ。
50歳前後のオッサン二人がアニメの聖地巡りをする…。
なんて気持ち良いんだろう。
ケケケ。
コンビニに到着し、兄やんのクロスバイクを車に積む。
そしてアイスコーヒーを買いに店内へ。
おそろいの黒のTシャツ。
そして「曲伊咲ちゃん」役の私はオーバーオールを穿いている。
若干恥ずかしい。
ディズニーランドへ行く道中で、既にネズミの耳を着けている様な感覚だ。
早く石川県に入りたい。
コンビニのアイスコーヒーを入れたら、何故か私の分だけコップにすりきりイッパイまで入っている。
シロップを入れたら、溢れた。
この二人でいると、こういう事が起こりまくる。
ほらな。
まだ出発もしてないのに、既に500字を越えた。これは二、三話またぐやろね。
覚悟してね。
何故か土曜の早朝に渋滞に捲き込まれながら、まずは草津のサービスエリアへ。
ここで朝ごはんを食べる。
私は蕎麦。兄やんはウドン。
よくよく考えれば、ここで「おいしー!」のシーンを撮れば良かったのだが。
プロローグとして、「秘密やぜ!」のシーンを撮影した。
そう。私達は、ただ聖地を巡るだけではなく、その場その場で写真や動画を撮影するのだ。それぞれのキャラになりきって。
もう一度言う。
私は伊咲ちゃん役だ。
そして50前のオッサンだ。
なんて気持ち良いんだろう。
ケケケ。
「秘密やぜ!」のシーンは、グダグダの出来で、そのグダグダ加減が余計に笑える。
兄やんの手のひらにサインペンで書いた「サバ缶」の文字がイタイ。
サービスエリアのフードコートには、まあまあの人がいる。
その中でオッサン二人が猿芝居を打つのだ。
なんて気持ち良いんだろう。
ケケケ。
二人赤面しながら車に戻り、先を急ぐ。
まだアニメを全部観ていない兄やんには、私のスマホで観てもらう。
運転の私は、その音声だけ聴いて復習する。
もう既に4回は観ているので、音聞いただけで情景は思い浮かぶ。
これから、実際の場所へ行くと思うと心が踊った。
13時45分
まず到着したのは「能登食祭市場」。
ここではまず、昼御飯に海鮮丼を食べようと思っていたのが。
なんと、まさかの完売。
何を食べようかと散々歩き回して、結局ホタテの串焼きを一本ずつ食べた。
これも本編に出てくるものだ。
主人公の丸太の親友、受川がこの市場でバイトしていて焼いたのを伊咲ちゃんが食べるのだ。
これは食べない訳にはいかんだろう。
とりあえず、それだけ食べて私達は外に出た。
ここで炭水化物を入れなかった私達は、後々ヤバい事になる。
そんな事も知らずに私達は自転車を下ろし、七尾探索へ向けゆっくりペダルを回し始めた。
つづく。