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「オッサンの放物線」 #20オッサン二人のインソムニア その2 七つ橋渡り

「オッサンの放物線」 第二十話 オッサン二人のインソムニア その2 七つ橋渡り

〜この物語はフィクションであり、着地点は無い〜

まず私達が目指したのは尾湾橋(びわんばし)。御祓川の河口付近に架かる橋で、物語にも何度も出てくる重要地点だ。
そして、その橋の袂から海の方へ降りた防波堤。そこがかの有名な伊咲ちゃんの足あげシーンの場所なのだ!
私はこのシーンの写真を撮るために二週間ほど柔軟体操をして準備して来たのだ。
実写映画では森七菜ちゃんも、柔軟体操をして挑んだらしい。
岸壁は工事中で、漫画のシーンとは少し形が変わっていた。

私は防波堤に上がり準備をした。
怖い…。
足の後ろ数センチは、ガチ海だ。
ここで片足立ちをしてY字バランス。
兄やんに写真を撮ってもらい、後で見たら。
Y字というより、T字だった。
まあ、いい。上出来だ。
この一枚を撮るために、この一ヶ月嫌なことにも我慢してきたのだ。
大袈裟ではなく、そう思った。

その後、「七つ橋渡り」の橋七つを順に見て行く。
最後の一つの橋が微妙だった。
「コレであってんのかな?」という私に兄やんが「あっちにも橋あるけど。」と言う。
そもそも、二人共ちゃんと七つ数えきれていない。
テンションの上がったオッサンは、数に弱いのだ。

次に向かうのは「蟹川ちゃんのお好み焼き屋さん」だ。
この店も実在していて、本編中のメニュー「白雪姫」もあるのだと言う。
自転車を漕ぎ、店の前に立った私達は愕然とした。
まあ半分は「やっぱりな。」という気分だ。
「営業時間14時まで。」
そらそやな。
諦めて、店の中に仕舞われた「蟹ちゃんプレート」と写真だけ撮らせてもらい退散。
腹が減った。

次は七尾高校。
物語のメインステージだ。
なんと天文台もちゃんとある!
しかしここは本当に学校なので、もちろん敷地には入れないし、写真に生徒さん等が写ってはいけない。
土曜日の夕方近くなので人は少なそうだが、ここが一番気をつけて撮影した場所だと思う。
腹が減った。

次は「バス停」。
ここも重要ポイントだ。
夜のお楽しみ会で、中見と曲がお巡りさんから隠れたり、観測会が雨で中止になった時の大事なシーンでも使われている。
私達はスマホを地面に立て掛けて、バス停に隠れるシーンを撮影した。
マジでバスが来たら、かなり怪しい。
ケケケ。
腹が減った。

やっとこさ食祭市場に帰って来た私たちは、少しフラフラしていた。
ハンガーノックだ。
しかし、我々はまだ炭水化物を摂ろうとしない。

何か食べようと言いながら、買ったのは「能登名物イカ団子」とカモメの餌だ。
そして海辺に出るや、イカ団子を手に持ったままカモメの餌やりに必死になる。
こういう所は、我々二人全くブレずに同じ行動をとる。
どちらかが先に、「そんな事より、ご飯たべようやー。」と言う事がないのだ。
ただ、そのカモメの餌というのが食パンを小さく切ったものだった。
カモメにやりながら、ちょっと食べよかなと一瞬頭をよぎった。

この時、手に持っていたイカ団子をいつ食べたのか全く記憶にない。
何故あんなにカモメの餌やりに必死になっていたのかさえも、おぼろげである。
因みに、外の温度は35℃を超えていた。
おそらく色々な原因で思考回路が鈍っていたのだろう。

つづく。