「オッサンの放物線」 #4シロクマ
~連続しょうもな小説~
「オッサンの放物線」 第四話シロクマ
2023年1月1日
あいたたたた…。
辺り一面真っ白だ。
左右両側は壁になっていて、前に真っ直ぐ道が伸びている。
道幅は、およそ5メートル。
ゆっくりと歩いてみる。
すると…。
5メートル毎に左右に道が伸びている。
なんじゃコリャ?
右の道へ入ってみると、また5メートル毎に…。
オイオイオイ。
京都市内よりややこしいやんけ。
えーっと…。
何でこんなトコおるんやっけ…。
実家でおせち食べてたよな…。
ほんでイカ、よな…。
ほんで…。
あ!
イカの網ヶに吸い込まれたわ!
て、ことは。
ここはイカ?
いかがなもんでしょう。
ケケケ。
冗談言ってる場合でもなく。
私は壁を少し舐めてみた。
「しょっぱい。ええ塩梅や。」
どうやら本当にイカの塩焼きの切れ目に落ちたようだ。
「さて、いかがいたそう。」
困り果てたが…。
心が洗われる様な白銀の世界だ。
まるで北極のようだ…。
行ったことないけど。
「なんか北極熊でも出てきそうやね。」
ボーッと前を見た、次の瞬間…。
私の心臓は破裂しそうに高鳴った!
「嘘やろ!!」
50メートルほど前方から3メートル級のバカデカイ北極熊が全速力でこちらに走って来ている。
人間、動転している時は真っ直ぐ後ろへ逃げる。
私は全速力で反対方向へ走るが、モチロン白熊の方が足は速い。
グングン追い付かれる。
やっとこさ、この迷路を利用して「まく」事を思いつくが、まだまだ動転しているので右にしか曲がれない。
熊の息使いが聞こえる。
しかし、視界から熊が消えると少しずつ冷静になって来る。
私は左のポケットを探った。
「あった…。」
レシート弾丸だ。
私はソレを慎重に左の耳に詰める…。
「3、2、1、Ready ?」
…。
「マジかーーー!!」
なんと北極熊は私の右側から現れた!
かなりの至近距離だ。
両手万歳。口あんぐり。まさに。今まさに!
私を食おうとしている。
私はパニックになって、クルクル回りながら叫んだ。
「Go!!」
ズバーーーン!!!
…。
私は箸でイカを摘まんでいる。
母が言った。
「コレ箱根駅伝か?」
戻ったー。
焦ったー。
どないなっとんやホンマ昨日から…。
私は真ん中辺から、煙の様なものが上がっているイカを一口で食べて飲み込んだ。
話は変わるが、私はアレルギー性鼻炎だ。
小学生の頃から箱でティッシュを持って行くぐらいの強者だ。
アレルゲン(アレルギーを惹き起こす物質)は、ハウスダストだ。
ハウステンボスではない。
ケケケ。
なんで、いきなりそんな話をするかと言うと、今まさに鼻がムズムズしているのだ。
大人になってからも、一度こんな事があった。
家にトウモロコシの苗を何本か植えていて、それが開花した。
トウモロコシは風で受粉する。
だからトウモロコシの苗を手で握って、ユッサユッサと揺らしたら受粉しやすい。
そのユッサユッサした後から、鼻水が滝の様に流れたのだ。
その後に行った息子の個人懇談で、担任の先生に「大丈夫ですか?」と言われる始末。
私は耳鼻科へ直行した。
「すいません。トウモロコシの苗を揺らしてから鼻水が止まらないんです。」
アレルゲンを調べる採血をしてもらって薬出してもらった。
後日、検査結果を聞きに行った。
ドクター曰く、
「あの…。トウモロコシはおろか何の植物にもアレルギーないです。ダニとハウスダストだけです。」
ケケケ。
そういうわけで私はハウスダストに弱い。
そして実家は母と兄の二人暮しで、なかなか掃除も出来ない状況だ。
ここへ来ると、失礼ながら鼻がムズムズする。
「ハ…。ハ…。ハ…。」
「ハックショーい!!」
…。
マジかー…。
私の右の鼻から、北極熊が半分出ている…。
兄が言った。
「コレは、実業団駅伝やで。」
つづく。