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「オッサンの放物線」 ♯2耳から弾丸

~連続しょうもな小説~
「オッサンの放物線」 第二話 耳から弾丸

2022年12月31日

振り返った私は驚愕した。
女性(の様なモノ)がお茶漬け(の様なモノ)を食べている。
食べているのだが、食べている口がケツなのだ。
顔の下半分が尻で。
尻でお茶漬けをすすっている。

どうなっとんや、コレ…。
ほんで周りの人間、なんで気づかんのやコレに。
私と目が合った女性(の様なモノ)は怒った様に席を立ち、そそくさと立ち去ろうとしている。

私も反射的に立ち上がり、家族に「ちょっとトイレ行ってくるわ。」と言い残し後を追った。
危険なのは解っているが、好奇心が先に立っている。
頭ん中にはゴーストバスターズのテーマが鳴りまくっている。

ミニスカートのそいつは、やけに脚が速い。
歩いている脚の動きとは明らかに違う速度で移動している。
だが、私もこう見えて自己ベスト3時間31分のマラソンランナーだ。(中途半端やなー)
しかし、ヤツに追い付くあと一歩の所で女子トイレに入られてしまった。

しもた。最近腹出てるからなー。
もう息上がってもうてるわ…。
鼻息荒く女子トイレに入っていく訳にもいかず、私はトイレの前に立ち止まった。

さてどうするかな…。
ほとんどの日本人男性が「さてどうするかな…。」って時にそうする様に、私はポケットに両手を突っ込んだ。
左のポケットには、さっき丸めて入れたレシートが入っている。

~~~~~
ここで私の脳ミソは30年前にタイムスリップ。高校2年の夏だ。
「専門学校合同説明会」
工業高校で行われた、京阪神の専門学校が多数集まる説明会。
体育館を暗くしてプロジェクターを流している。
希望している医療関係の学校の説明だったので、私は真剣に話を聴いていた。
でも、ちょっと左耳が痒い。
無意識に小指で耳をほじる。

「ん?」

ボソボソっと音を立てて、何か大きなモノが取れた。
私は直ちにそれを左手で握り込み、ポケットに入れる。
「なんや。この耳クソ。バカデカイぞ!」
私は周りを確認する。
誰もこちらを見ていない。気付かれていない。
見たい。メッチャ見たい。
どんなデカイ耳クソやねん。
でも、今出されへん…。

もはや説明会そっちのけでポケットの中で耳クソを解体する。
ホンマはちゃんとした姿を目で見たかったけど。しゃあない。手探りで確かめよう。
一体コレはなんや?
大きさ、形は弾丸の様だった。
弾丸触った事ないけど…。
材質は…。
なんか紙っぽいな。パプルスみたいな繊維がちぎれる感じ。
「パプルス」で、合ってたっけ。
ケケケ。

私は楽しんだ。
残りの説明会の時間、全部使って耳クソを弄んだ。
そして、ほとんどの日本男子高校生がそうである様に…。
帰り道には、そんな耳クソのことはすっかり忘れていたのだった。
~~~~~

あぁ。
懐かしいなー。
あん時の耳クソ、どこ行ったんやろな…。
ノスタルジーに浸った私は、丸めたレシートを何気なく左の耳に入れた。

すると!
左の耳から欧米人の様な声が聞こえる。
「3、2、1、Ready?」
私は反射的に…。
「Go!」と言ってしまった。

ズガーーーン!!!!

私の左側の壁の女子トイレの「女子マーク」の頭が撃ち抜かれコンクリートが2cm大でむき出しになっている。
そして、その中心部からは煙の様なものが上がっていた。

私はダッシュでその場から逃げる。
走りながら、もう一度左のポケットに手を入れてみた。
「弾丸」が一つ、補充されていた。
思えばソレが、私の最初の「武器(ウエポン)」だったのだ。


つづく

「オッサンの放物線」 #3イカの隙間へ |ユッキー #note #私は私のここがすき https://note.com/yukky2001/n/nf6f35126b1da




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