MMT・積極財政によくある批判リスト
①国債を発行すると後々、税金で返済する必要がある
明治以来、国債発行残高は上昇の一途をたどっており、2002年時点で明治5年の2380万倍に達している。
明治5年からの政府負債残高の推移(きたのブログ様)
2021年現在、2002年のおよそ1.8倍の国債発行残高になっているため、明治5年に比べれば4200万倍となっている。国債を個別に償還することはあっても、その際は借り換えをするのが世界の先進国では一般的である。
②国債の債務不履行の事例を無視している
MMTが対象とするのは「変動相場制における自国通貨建て国債」の話である。試みにwikipediaに載っている政府の債務不履行の一覧を見てみると、1982年以降の例は全てA地方政府、B外債、C固定相場制のいずれかである。A地方政府は自国通貨が発行できず、日本でも夕張市の財政破綻などが知られている。Bの外債は、ドルを発行できない途上国やユーロを発行できない加盟国が破綻するため想像しやすいだろう。
Cが分かりにくいのだが、固定相場制とは法律で決めるものではない。実際には交換量や需給で為替が決まる以上、民間が大量に為替注文を入れた際にレートが変動しないように、政府が介入して為替を固定化するために外貨準備が必要になってくる。これに失敗した時、債務不履行に陥るのである。
③国債を発行すると金利が上がる
国債を発行しても金利は下がり続けている。(財務省作成)
④国債や通貨を発行しても物価が上昇するだけである
通貨発行と物価上昇には直接的な連関はない。(カヘイさん作成)
⑤通貨発行すると為替レートが動き、極端な円安になる
通貨発行量と物価上昇率(国内の財に対する国内通貨の価値変動)が直接連動しないのと同様、通貨発行量と為替レート(国外の通貨に対する国内通貨の価値変動)は直接的な連動はない。(カヘイさん作成)
ご覧の通り、アメリカは日本の倍以上のペースで貨幣量を増加させているが、リーマンショックや東日本大震災といった危機的状況を除いて円高ドル安に振れたという事実はないので、貨幣発行量と為替レートも物価もやはり直接的な関係はないと結論付けざるを得ない。
⑥MMTは国債発行・通貨発行を是としている。これでは無税国家が出来上がる
MMTは「税は政府が支出するために集めているのではない」と言っているだけで、税が不要だとは全く言っていない。消費活動の誘導(たばこ税でタバコの消費量を減らすなど)や自動安定化装置(累進性所得税は、不況時に税率を下げて好況時に税率を上げるということを自動的に行う)といった効果を挙げている。また、MMTは租税貨幣論と呼ばれる考えに基づいており、貨幣が流通するのは「皆が価値あるものと認めたからである」というアダム・スミス以来の伝統に異を唱えて、「政府が租税として受け取るという約束があるからである」と考えている(拙著「 無税国家は可能か? 」)。
⑦財政赤字を拡大すれば政府が信用を失い、国際社会から締め出される
「管理通貨制度」なのだから金融政策も組み合わせた上で「通貨の管理」を行えば信用が失われることはない。
⑧財政赤字を拡大して国債格付けが落ちればドル調達コストが上昇し円の信用が落ちる
国債格付けとドル調達コストは無関係である。
⑨インフレは一度起きたら止められない。MMTは物価上昇を無視している
MMTは強烈にインフレ率を意識する立場である。インフレ率が高くなるのは、需要が供給を上回ったときである。だからMMTはJGP(雇用保障プログラム)を通じて完全雇用を達成し、供給能力の維持に努めるように提言する。これはMMTではなく持論であるが、教育や研究などで供給能力の底上げを目指すことも有用なインフレ対策である。また、防災インフラの整備などで災害時に供給能力が破壊されないように備えることも重要である。
⑩ハイパーインフレはある日突然起こる。皆が一気に国債を売り浴びせたら一気に円の信用は落ち、どうにもできない
財務省の作成した国債保有者別内訳を見てもらいたい。
日本は自国通貨建て国債である。また、約50%が日銀保有で海外保有は10%もない。日本国内に生きる保険会社や年金機構は、全て円での支払いを最終目的として国債を保有している。そのため、円の確保を目的とした国債売却によって円の信用を落とすなどという素人以下の脳みそで資産運用を行うわけがない。また、海外保有も7%であり、売り浴びせようが対した影響はない。
何より、日銀は円の発行主体として、すべての国債を言い値で買うことが出来る。国債の暴落はその時点でただの幻想であると分かるし、仮に円が市場に溢れたとしても大したインフレにならないのは先に述べたとおりである。
国債の浴びせ売りでの暴落は、例えば「ドル建て○○国債」などで、米ドルを将来受け取る債券を保有するなら、信用できない○○政府よりも別の発行主体に切り替えた方が良いという理由で行われるのである。唯一無二の「円建て日本国債」と同列に語れないのは明らかである。
※今後も追加予定です。
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