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夢の中に出てくるほど考えて、そこから導きだす絵

先日オーダー水彩画の作品を、ご依頼者の方にお届けしました。

●絵に込めたい気持ち、残したい気持ち

ヒアリングシートを通じて伺った「絵に込めたい気持ち」の要約は以下の通りです。

「初めての子育て、分からないことだらけで寝不足の毎日。身なりを整える余裕も一緒に写真を撮る余裕もなかった。そんな時に不意に撮った1枚。

そこには、当時は気づかなかった かけがえのない時間が映っていました。大変だけど、愛おしい息子への思いを切り取ってほしいです。」

新生児の赤ちゃんが、まだよく見えない目でお母さんを一生懸命見つめ、匂いや存在を感じている。その様子を包み込むように見つめるお母さん。そんな2人の静かで美しいやりとりに胸を打たれました。

●絵を描く上でこだわった点

「そこには、当時は気づかなかった かけがえのない時間が映っていました。大変だけど、愛おしい息子のへの思いを切り取ってほしいです。」という気持ちを絵にこめるため、絵を描く上でこだわった点を残していきたいと思います。


上記の気持ちを表現するため、大切にした要素は、
1.ありのままの美しさ
・身なりを整えず、不意にとった1枚なので飾りすぎない。
・戸惑うことも多い子育て。「大変であり、そして愛おしい」という息子さんへのありのままの気持ちを大切にしたい。

2.生まれたて・ピュアさ
・生まれて1ヶ月、目がはっきり見えない状態でお母さんの存在を感じる様子を伝えたい。


3.神秘さ
・2人がただ見つめ合う行為がとても美しく感じる。

1〜3を実現するため、
「見つめ合う2人を中心と、白を基調としたシンプルな構図」というのはすぐに思いつきました。

ただ、どういったモチーフ(背景やあしらい)が、絵に残したい気持ちを表現できるのか脳内でずっと考え続けていました。水彩は一度筆を置いてしまうと修正ができないので、脳内でシミュレーションしたりラフ画を描いてイメージをします。
ずっと考えているので夢の中で思いつくパターンも多いです。

初めに思いついたのが「黄色と緑の滲み」を右手前と左手前に置くパターン。
紫の髪色との補色関係にあるので綺麗かなとも考えました。

ただ、何か自分の中でしっくりこない。ふわっと滲ませるだけでは何かたりない。

絵を描く上で1番時間がかかっているのは「描く時間」より「考える時間」だと思います。
どう描いたらいいか、うんうんと考える時間は大変で、でもとても幸せな時間です。

「ありのままの美しさ」「ピュアさ」「神秘さ」を感じるよう、結果導き出したモチーフ(背景やあしらい)は、「百合の花」。
百合の花は、花束にならずともシンプルに一輪でただ立っているだけでも美しく「飾らない、ありのままの美しさ」を感じます。
また百合の白さが「ピュアさ」や「神秘さ」も印象づけてくれるように思いました。百合の花言葉は「純粋」です。

額のように左右に縦のラインを強調する配置し、百合の花の佇まいがお母さんと赤ちゃんにリンクするようにする心がけました。

純粋無垢でありながら凛とした印象になっていますでしょうか。

部分的に鉛筆だけで植物を描き(あえて色塗りしない)幻想的な雰囲気になるよう仕立てました。
お母さんの香りや存在を全身で感じている赤ちゃん。まだ視点はしっかりと定まっていません。
神秘さも感じられるようまつげや髪の一部に
黄色味を加えて、光を感じるようにしました。
お互いの温度を感じ合っているように思えるよう、目線や距離を意識しました。「大切で愛おしい」という気持ちが伝わってきますでしょうか。
百合は薄く描きつつも、葉をエッジをところどころ消したり色の濃淡をつけることで、空気に一体化するような印象に。

恥ずかしいですが没となった失敗作もこちらに残しておきます。

お花部分を白く抜くため、ノリ状のものを塗るのですが紙にくっつき紙がボロボロになってしまいました。
こちらは、お母さんの表情が
うまく描けずゼロから描き直しました。


そしてついに納品の瞬間。

毎度のことながら絵をお送りして感想をいたただくまでドキドキの瞬間です。

そして、依頼者の方からメールに「目に入った瞬間号泣してしまいました笑 yukkoさんの作品は、どうしてこんなに心もを打たれるのでしょうか…」との文が…!

思わず涙ぐんでしまいました。依頼者の方の感想を読む瞬間は、本当に心から幸せに思う瞬間です。

家の中でふとした時に絵が目に触れた時に、ほっと心がほぐれるような存在になっていたら幸せです。

またご家族の絵を描ける日を楽しみにしています。描かせていただき本当にありがとうございました。


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水彩作家yukko
サポートいただいたら息子とのお出かけに使いたいと思います、そしたらまた絵を描きたいと思います✨