個展「なんでもない日」を終えて
若葉が目に眩しくうつる4月の日、人生初の個展を無事に開催することができた。
うまくまとまる気がしないけれど、ツラツラと感想を綴っていきたい。
個展は、夢のような時間だった。
約100名の方が変わるがわる足を運んでくれて、中には時間のない中タクシーで駆けつけてくださった方もいた。
最後の最後まで、この個展はうまくいくのか分からなかった。
だけど、設営しているときに瑞々しい色合いの絵が白い壁に飾られたとき「もしかしたら大丈夫かもしれない」と、少しだけ感じることができた。
何度も何度も見返した作品たち。何度も描き直した作品たち。
約40点の展示作品のうち、個展用に描いたものもしくは過去に描いた絵を描き直したものが約半数。時間のない中、うまく表現できない作品が数多くあった。特に時間がかかったのは、「夜」「君の瞳にうつるもの」「黄昏時」「秋と君」だ。
近くで見たり、2、3メートル離れて見たり。よし出来たと思っても、翌朝見返すと足りないところや納得いかないところが見えてくる。全然ダメだ、こんなの飾れない。時間がもうない、無理だ。そんな気持ちが何度も駆け巡る毎日だった。
「夜」は、設営の日まで飾るかを迷った。だけど、「夜」のキャプションは子育てをしている中でどうしても伝えたいことだった。
「眠い目を擦りながら寝かしつける、この時間が永遠に続く気がした」
「ふと目が合うと君がふんわり笑った」
うまいか、うまくないかよりも「何を伝えたいか」ということを大事にしようと腹をくくった。
「秋と君」は、細部が納得できていないところがあった。4月だからとこのまま諦めようかということも頭をかすめたけれど、思い切ってゼロから描き直すことで予期していなかった色合いの作品を作ることができた。
準備を始めた頃、私は「素人っぽく見えないようにしなきゃ」とか「絵は大きくなきゃ」「トーンは揃ってなきゃ」など、誰にも求められていないのに、誰かの目を気にして不自由に絵を描いていた。
でも、尊敬する画家の方の絵を見て大切なことを思い出した。
絵はとても自由だ。子どもたちのように自由だ。
何の既成概念にも囚われていない。
もっと自由に描こう。キャンバスからはみ出るくらい自由に、画材だって好きにしたらいい。誰にどう思われるかなんてことは考えず、とにかく息子たち過ごす煌めく時間を絵に込めよう。そう思い直すことができて再出発をした。
個展開催を語るにあたり、欠かせることはできないのは夫の存在だ。
個展の準備を進めていくうちに、私が疲弊し、夫が疲弊し、家が荒れた。きっと息子たちも敏感に感じ取っていたに違いない。
それはそうだ。2人でなんとか回っていた家事育児も、夫には時間を作ってもらい創作時間をもらったりしたので、余裕がなくなってくる。
可愛い息子たちとの「なんでもない日」を大切にしたいと思って個展を開こうとしているのに、今目の前にある家族とのなんでもない日を大切にできてないんじゃないかと胸が痛くなった。
一向に終わらない作品作り、額装手配、キャプション作成、プロモーション、クラウドファンディング…。たかが小さな個展といえど、やるべきことは山積みだった。
夫が「疲れた」とつぶやく。
いつしか私が個展開くために夫が応援してくれることを当たり前のように感じていたことに気づく。日頃から夫と私の個人の時間は交互に確保するようにしていたけれど、最後の2週間はより一層サポートに回ってくれていた。自分の夢に対して頑張ることはできても、人の夢を応援してサポートすることはとても大変なことだ。
この個展は彼と一緒に作り上げたものだ。企画段階から全て相談して、ムービーを作ってもらい、タイトルの英訳をしてもらったり、時間を作ってもらった。私がクヨクヨ悩むときも、カラっと「そんなの悩まなくていいんじゃん?」と声をかけたり、あんまり面白くないジョークでお家を明るくしてくれた。
言葉では言い尽くせないけれど、本当にありがとう。
個展を見に来てくれた人に話したら「旦那さんとチームなんだね」と言ってもらい、まさにそうだなと感じた。
私も、彼の夢を心から応援したい。
個展が終わった後は、お互いを褒め称えてハグをした。
不安な気持ちを抱きつつも迎えた4月23日。
オープンから少しして、多くの方が会場へ。
どんな風に感じるだろうとドキドキしながら、お客さんを直視することはできないのでどこをみるでもなく空中に目を向けていたところ、グスッグスッと音がした。まさか、と思ったら涙を流して作品を見てくれている。
驚き、そして嬉しさと興奮で自分の体温が一気に温かくなるのを感じた。
自分の気持ちに向き合って絵を描き続けていたので、見た方の目にどんな風にうつるか全く想像がついてなかった。
生涯、宝箱に取っておきたいような言葉をいくつもいただいた。
有難うといいたいのはこちらなのに。
「優しい気持ちになれる」
「大切な人との時間を思い出した」
お話する中で、作品をきっかけに思い出したご自身のエピソードや感情などを共有してくださり、私もその目に映る光景を想像し胸がいっぱいになった。
作品を最後に意味を見つけて色付けしてくれるのは見てくれた方々だ。驚くほど色とりどりの作品たちとなった。
いただいた綺麗なお花で会場が一気に華やぐ。見てくれた人達の表情や言葉で会場が優しくなっていく。
皆さんの温かさに直接触れて、私の心はフワフワと浮かんでいるようだった。
そして、これから年に一回個展を開催することを決めた。
「またやってくれる日を楽しみにしてます」
「今回は行けなかったけど次回を楽しみにしています」
そう言ってくれる方たちと、またお会いしたい。
たった一度ではなく長く。
時折、昔を振り返りながら。
これからも作品を囲んだ長い関係を築いていけたら幸せだ。
今回の個展は本当に1人では実現ができなかった。
クラウドファンディングでサポートしてくれた方々、SNSで応援してくれた方々、義理の両親、両親、姉家族、手伝ってくれた友人や先輩や家族、そして可愛い息子たちと夫。
本当に有難うございます。
これからも創作を続けたいと思うので、応援をしてくれると嬉しいです。
1週間経った今も、いただいた綺麗なお花に囲まれて、いただいた美味しいお菓子を少しずついただきながら、幸せ気分を味わせてもらっている。
最後に、いただいた感想を載せさせていただきます。
宝箱にいれて、ずっとずっと読み返していたい。