おばあちゃん
いくつかの壁を乗り越え、おばあちゃんはICUから一般病棟に移ることができた。
普通に話もできるし、病院のご飯も美味しく食べているそうだ。
毎晩母のところに泣きながら電話がかかってくる。
大抵は神様に感謝し過ぎて嬉しくて泣いているか、他人の苦しみに共感し過ぎて泣いている。
いま心配するの自分のことちゃうんかい、とつっこみたくなる所がおばあちゃんらしい。どんなに小さいことにも感激し過ぎるのも、いつものおばあちゃんの通常運転。
あまりにも元気そうなので、病院から病人がかけてきていることをすっかり忘れて、いつもの癖で「おばあちゃん元気〜?」と電話越しに聞いてしまった。
「元気じゃないから病院おるねん」と横にいる母につっこまれたが、「元気元気〜!」と甲高いおばあちゃんの声が響いた。
そしてこんなことを話し始めた。
ICUでおばあちゃん本人だと分からないくらい顔もパンパンに腫れて苦しそうにしている時、「まだこっちで仕事がある」と、ふと思ったらしい。そして今、小さい頃抱いた献身の気持ちがまた大きくなっていると言った。
母は「まだこっちでやらなければならない仕事が残っているんです。神様、まだ天国へ連れて行かないでください」と祈ったらしい。母の祈りがそのままきかれたんだなあと実感した。
おばあちゃんは「この歌が頭に浮かんでしゃあないねん」と言って賛美歌を歌い始めた。
本当にこの人には驚かされる。
地元では、おばあちゃんが生き返ったと噂になっているらしい。神様をまだ知らない人が、おばあちゃんが信じる神様は本物だと、この奇跡が、神様と繋がるひとつのきっかけになればと願う。
生かされていることが、今のおばあちゃんの最大の神様の示し方だ。もう既に遣わされているのかもしれない。