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スターウォーズ茶会を開いてわかったこと

お茶会には必ずテーマがあると言われています。ひな祭りや七夕などの季節の行事、お正月や何かのお祝いごとをテーマにすることもありますね。

とはいえ、そのテーマがハッキリと明示されているわけではありません。招かれたお客様は、軸やお菓子から「今日の亭主はこういったことを伝えたくて茶会を開いたのだな……」と推測していきます。そして、亭主との会話を通じて、自身の考えと照らし合わせたり、亭主の心尽くしに感銘を受けたり、茶会に散りばめられた思いを五感を使って味わうのです。

そんな素敵なお茶会、いつかは開いてみたいものですが、技術や経験も道具も足りない自分には難しい。それなら、まずは自分の好きな世界をテーマに茶会を構成してみるのはどうだろうか、ひと目でわかるテーマなら、きっとお客さんも参加しやすいだろう。そんなことを考えて、好きな映画「スターウォーズ」をテーマにした茶会を催すことにしました。

実際開いてみると、いろいろとわかったのです。たとえスターウォーズという、茶道とかけ離れた世界をテーマをもってきても、茶会に脈々と繋がる「大事なこと」は同じだということを。

今回は、スターウォーズ茶会の様子と、それによって感じたことをお話します。


茶会の様子

まずは茶会の様子から。床の間、茶碗、お菓子などいろんなところに、スターウォーズを散りばめました。

◯ 床の間
お軸は、いつもお世話になっている方に一筆お願いしました。紙釜敷にのっているレゴは、お茶会をするダースベイダーとストームトルーパーをイメージしています。隣にはR2D2。音に反応して、動いたり喋ったりします。

R2D2はSpheroでプログラミングすると動かすことも可能

◯ お菓子
お菓子はとても悩みましたが、「タケノとおはぎ」さんにエピソード7のポスターをお見せして、特別に作っていただきました。とても美しいデザインで、おはぎというより、アート作品のようですよね。食べるのがもったいないぐらいですが、食べてももちろんおいしいです。

ドライフルーツが入っているフルーティなお味

お菓子には、ボタンを押したら光るライトセーバーを取り箸に付けました。これ、本当に「お箸」として売られてるんですよ。見えないけど、お菓子を置くお懐紙には「SW茶会」という判子を押しています。判子は<こちら>でオーダーメイドしました。

ルークのライトセーバーで、ダークサイド(赤)のお菓子を取る様子

◯ 茶碗や茶筅
お正客のお茶碗は赤膚焼のダース・ベイダー柄です。茶筅にはストームトルーパーが刻印されています。

茶碗と茶筅は公式グッズ(これ使って茶会開いた人は他にもいるだろうか)

◯ 会記とNFT
会記も作りました。QRコードを載せて、参加者は参加記念NFTを取得できるようにしています。このNFTは、床の間に飾ってあるレゴを一コマずつ撮影し、動画にしています。(ぜひNFT<こちら>をご覧ください)

会記にNFTのQRコード載せた茶会は、きっと世界初!

茶会の構成

茶会はカジュアルに、薄茶2碗とお菓子2種をお出ししました。

1:ご挨拶・香煎(5分)
香煎の代わりに、上巳の節句が近いので白酒をご用意。スターウォーズ柄のショットグラスに入れてお出ししました。

2:生菓子・薄茶(15分)
話しながらでも点てられる「流し点」というお点前をしました。これは、亭主がお客様のほうを向いてお点前をします。ちょっと向きが変わるだけで、亭主と客の距離が近くなり、全員と会話しやすくなるんですね。

見えないけど、会記をプリントした帯揚げをつけています

3:干菓子・薄茶(15分)
干菓子は和菓子ではなく、星型のクッキーを。おふたりの方にお手伝いをお願いし、裏で点ててもらったり、お菓子を出してもらったり、何から何までいろいろと助けていただきました。

1時間を予定していたのですが、意外と早く進んでしまい、逆の意味で焦りました。お稽古のときはゆっくりとお点前するから時間がかかるけど、話しながらだとポンポン進んでいくんですね〜。

茶会をやってみて…

さて、実際にやってみた後の感想はというと。楽しかった、、、けど、もっと修行が必要だと実感しました。それは、お点前や茶道に直接関係することだけでなく、もっと幅広く精神的な意味も含めてです。

今回は茶道未経験の方も参加しやすいように、作法はまったく関係ないお茶会にしました。ルールがたくさんあると敷居高いし、なにより堅苦しいから、もっと自由にお話しながら、お茶を楽しめるようにしたいと思って。

しかし、やってみてわかったのですが、自由って一番むずかしい。

型があると、亭主と客は、さまざまな方法で心を通わせられるんです。お辞儀や拝見、問答だけでなく、ときには客から合図を出したり、逆に静かに耳を澄ませたり。それらひとつひとつがコミュニケーションとなり、お互いをつなぎ合わせるハブとなります。

けれど、型がなくなったら、後に残るのは亭主の力量です。作法がない分、次に何をしていいいのかお客さんもドキドキしているはず。そんな状況でも、安心してもらえるよう、ゆったりどっしりとお点前をし、亭主が率先して会話をまわし、全員がその場を心から楽しめる雰囲気を作り上げなければなりません。

お菓子とお茶である程度は楽しめるものです。ただ、カジュアルな形式あればあるほど、それを後々心に残るレベルにまで持っていくには、点前以外のことにも心配りができる上級者でないと難しいのだということを実感しました。

今後はどうすべきか

では、今後はどうすべきなのでしょうか。自分のレベルが上がるまで、このような茶会をやめるべきでしょうか。

いえいえ、やっぱり茶道未経験の方も来れるような会を開きたい。どころか、もっと実験的な会もやってみたい。

そのためには、稽古を重ねて、点前の習得だけでなく、気配りや知識の枠を広げることがもっと必要。そして、身の回りのものを大切にすること、思いやりの気持ちを持つこと。日々に感謝して、気持ちを落ち着けることも重要なんじゃないかと。最終的に、茶会で立ち現れるのは、「そのひととなり」だからだと思うからです。

能というのは、この「おもひ」を圧縮した芸能で、そして能を演じるということは、その「おもひ」を解凍していく作業なのかもしれません。
そこで解凍された「おもひ」は客席にあふれていき、それがまた観客ひとりひとりの「おもひ」と同期して、そこに何かを生み出す。(中略)
「おもひ」の奥には、「おもひ」や「こころ」とは異質の心的作用である「心(しん)」があります。人間の感情のずっと奥にあり、言葉を伴うことなく一瞬にして相手に伝わる何か、それが「心(しん)」です。それは「芯」にも通じ、「神(しん)」にも通じる、ちょっと神秘的な心的作用です。

「あわいの力」安田登

おもいの精度を高めて、おもいが伝わるように技術を磨く、そして、いつかはお客さんと「おもひ」が同期するような、わたしなりのお茶会ができるといいな……。そんなことを夢想しながら、精進・楽しく・丁寧にお茶生活をしていきたいと思っています。


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