小説「ありがとうじゃ足りない」3話
綾原音楽スタジオ。
呼び出されたスタジオはここだった。小さなビルの1階にあって、それより上はマンションのようだった。
まだ11時まで10分ある。ウダウダしていたら遅いって言われるかもしれない。多分「綾原」音楽スタジオだから、多分夢希さんのご家族が運営されているんだろうから、夢希さんはもう中にいるかもしれない。
早く入らなきゃ、でもな、とウダウダして10分。11時きっかりにドアが開いた。
夢希さんだった。
「理音さん!ずっと立ってたんですか!すみません気づかなくて。」
「あ、い