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阿賀野探訪記その2

とある冬の日、雪がしんしんと降る阿賀野市を訪れた。

冬になるとこの地にやってくる白鳥を見る目的もあったが、あるSNSアカウントに興味を引かれ、ずっと行ってみたいと思っていた場所があったのだ。

丸三安田瓦工業さんのギャラリー、”ものがたり”である。

きっかけはひときわ存在感のある"食器"

実は丸三安田瓦工業さんを初めて知ったのはSNSではない。

以前、新潟駅のぽんしゅ館クラフトマンシップを見ていた際、目に止まったものがあった。

上品で美しい鉄色と、マットでありながら艶やかさも併せ持つ不思議な質感の酒器。
妙に心に留まる存在感のそれは、傍らの説明を読むと、安田の瓦屋さんの製品らしい。

それこそが丸三さんの製品、TSUKIである事を後に知るのであった。

そしてたまたまTwitterのアカウントを見つけ、ユーモラスながらもしっかりと製品の興味を引くツイートの数々に、すっかりファンになってしまったのだ。

丸三さんの魅力的な瓦製品たち

丸三さんの製品の意匠は、過度に奇抜なものではない。
しかし何故か心をとらえて離さない魅力があるのだ。

“a-be cat.”もその一つ。

箸置きのようなペーパーウェイトのようなそれは、ころんと丸いフォルムで、猫のように見える形をしている。
これは実際に福島県で出土した土製品をモチーフにしているのだそうだ。

シンプルな形状ながら愛らしく、程よいサイズと重量感はふれる手のひらに心地よく馴染む。

いつの間にか過去に置いてきたはずの雑貨収集癖が目を覚まし、我が家のいたる所に”a-be cat.”が増殖している。

…なかなか悪くない景色だ。

丸三さんの製品はこのような小さなものから置き物、食器など多岐に及ぶ。

平たいお皿に、ぽってりと肉球の型押しが施された”猫の手も借りたプレート”も素晴らしい製品だ。

比較的ポップなカラーバリエーションがあるが、安田瓦の色味を持つ”曜”は、当時ふるさと納税返礼品限定のカラーのようだった。

我が家が納税した商品は、”猫の手も借りたプレート”の、使いやすい直径18cmサイズ2枚に加えて、なんと”a-be cat.”も2匹ついてきてくれるセット。
なんともホクホクである。

返礼品として受け取った実物は、思った通りの美しい色味で大変満足できた。

なにを盛り付けてもかっこいい

ちなみに昨年の夏にオープンした道の駅あがのでも、カラーリング”曜”の取り扱いがあるようだ。

瓦屋さん?お芋屋さん?お菓子屋さん?はたまた…

既にご紹介した限りでも瓦屋さんでありながら多くの製品を手掛けている事が分かるが、
驚くべき事に丸三さんの展開する製品のジャンルはこれだけではない。

なんと珈琲やクリームソーダをはじめとする喫茶メニューに加え、季節ごとに焼き芋、かき氷、お菓子や野菜販売等も行っているのだ。

丸三安田瓦工業さんのギャラリーである”ものがたり”を訪れた理由は、実はこのフードメニューにもある。

Twitterで評判の、美味しい焼き芋をなんとしても食べたかったのだ。

焼き芋とクリームソーダ下さい!(※外は雪)

“ものがたり”はコンパクトながらもぎっしり魅力の詰まったギャラリーだ。

綺麗に陳列された瓦製品(たまに瓦製品じゃないものもあるのがまた面白い)、自社製品グッズのガチャガチャなどと一緒に、ちゃんとフードメニューの看板もあった。

珈琲や自社製品の牛乳専用カップ”PU.LE.LA”でいただく安田の牛乳など、喫茶店も顔負けのラインナップ。

目移りするなか目的であったお芋と、外で降りしきる雪に臆する事なくクリームソーダを選ぶ。

季節外れのメニューをオーダーしたのはこちらであるにも関わらず、寒いだろうとストーブに火を入れてくれた。
心遣いが有難い。

さてお味はというと、どちらもとても美味しい。

その日の焼き芋は透けるように鮮やかな色味のいもジェンヌだった。

普段あまり積極的に焼き芋を食べないので、ちょっと重いかな?と思っていたがトロッとした食感と濃厚な甘みで飲むように完食してしまった。
こんな美味しい焼き芋食べた事ない…

お芋のこの透明感よ

クリームソーダも凄い。
ソーダはもちろんの事だがアイスがまあ絶品で、一口食べただけでそんじょそこらのアイスとは別格だと分かる。

口の中でミルクのコクがぶわっと広がり、後味はスッと消える。
(ああ、新潟の酪農発祥地は安田だったな)とすぐに思い起こされる味だった。

焼き芋とこのアイスを一緒に頬張ったら、あたたかい焼き芋の甘みと冷えたアイスのスッキリとしたコクの相乗効果に、思わず感嘆の声が漏れる。
どちらも単体でのポテンシャルが高いゆえにこの組み合わせは反則級だ。

…とまあ、こんな感動的な食事体験をしていると段々瓦屋さんにいる事を忘れそうになってくるが、周囲に配置された個性豊かな瓦製品たちがここは瓦屋さんだと主張してくる。

瓦屋さんでこんなに美味しいフードメニューが味わえるとは…いっそ不思議体験の領域かもしれない。

工房では様々な体験も

その時はちょうど鬼瓦作りの催しがあり体験させて頂いたが、一部の体験の内容はその時々で変わるようだ。

なかには瓦割り体験などもあり、「え、瓦屋さん…瓦割っちゃっていいの…?」感があるが、製造工程でハネたものなど正規品にならないものにさらにひと手間加えて誰でも割れるようにしているらしい。
意外にも結構手が込んでいる。

ちなみに本来なら常人では割れないような瓦なのだそうだ。
その辺りは流石、降雪地に構える瓦屋さんである。

開催している体験については、是非とも読んで楽しい丸三さんのTwitterでチェックしてもらいたい。

きっと、多方面にわたる魅力に心惹かれることだろう。


そろそろ暖かくなってきたので、またクリームソーダを飲みに行きたい。
ついでにa-be cat.も追加でお迎えしようか。
そんな想像もまた楽しい。

読んでくれてありがとう。

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