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無我

思わないでいられたら

私はなくなってくれて。

動かないでいられたら

心はなくなってくれて。


身体をもたない

非存在の点の集合としての自然な主体だけが残り

風か雨か

削ぎ落とされていった自己の欠片が食べることも拾い集めることもできない細かさで散らばり

朝なら日に

夜なら月に照らされて

ぱっ、ぱっ、ぱっぱっぱっ

光るのだ。



私は私でなくなったその空間で

時間の必要ない空間で

全ての心地良い自然の中にあって

やっと

遅れることなくそれを眺める。



その心地よさを少し抜け出して

抗って

苦しんで

ちょっと楽しくなった頃

書き上げたその雪のような真っ白な一文を

描き出した喜びと

悲哀すらない苦しみの中で

全てを純粋に赦した喜びとを抱えて

ただある。



ただある。



無我
雪屋双喜
2024.8.16

ありたい、にかわるとき、人としての私が生じた。

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