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Photo by
take_kuroki
尾
どう言えば良いだろうか。
例えば、鳥が電線に停まる。その一瞬後で、漕ぎ出した自転車の軋む音のような。
白く頭に残って、その後にすっと尾を引くように消えていく。鳥は多分まだそこにいて。
歩いていた。片手に。
送られてくるメッセージは友人たちから。時々届くメールの音はきっとスパムかいつかのnote記事。電話が鳴ったら画面を確認するから、それまでは音を立てないでと思う。通知音は切らない。私を独りにしないで。
電話が鳴るのを多分待っていた。彼氏彼女を続けていけば、その先に失った感情の取り戻し方がある気がして。好きになったのは意識よりずっと後だった。そのことに対する罪悪感は私には少し薄すぎたみたいで、今はどこかに混じってしまった。
渋谷でも天神でもキタでも何なら琵琶湖の水でも、何でも良い。私を独りにしないで。
ペットでも、思い出でも、花でも、何でも良い。私を独りにしないで。そう思って。
何でも良いはずだった。諦められるなら。でもダメだった。諦められなかったから。涙の跡が尾を引いたから。
家族も、同僚も、たまに会う友人も。故郷のばあちゃんも、空も星も大地も風も。私だけを残して。
ねぇ、電線に停まった私。
独りにしないで。
尾
雪屋双喜
2023.2.2
言わなくても分かるが共感なら、結局私は満たされない。