読書記録 ストロベリーライフ
読書記録 ストロベリーライフ
荻原浩さん著 毎日新聞出版 2016年
最近、荻原さんの本を読み始めました。読後感が爽やかなのが気に入っています。
今回は毎日新聞の日曜版に掲載された長編でした。
長編小説の好きな私には、とてもいい時間を過ごすことができました。
◎あらすじ
主人公の望月恵介はグラフィックデザイナーとして大手の広告会社で働いて後、フリーとして独立していた。
家族は、パートで家計を支える妻の美月、幼稚園の年長の息子の銀河の3人だ。
恵介は故郷の静岡を離れて東京で暮らしていた。
恵介は農家の4人兄弟の末っ子の長男だ。
美大に進学して東京に出る時、家族には農家は継がないと、宣言して家をでた。
そんな恵介に、母親から電話があった。
父が脳梗塞で倒れたと、いうのだ。
恵介は、急いで静岡に帰省する。
そこから、恵介の人生が大きく動きだす。
ここまで。
◎気になった表現(本文88ページから)
✴︎
中学生の試験勉強用みたいなバインダーノートが急に、両手に余る重さに思てきて、恵介は大きく息を吐き、一人きりのハウスを見回した。
親父の病状などおかまいなしに、苺が長い列を作って収穫を待っていた。
真夏に近い温度なのに、鳥の声も蝉の声もないハウスの中では、実のふくらむ音やランナーが伸びる音すら聞こえてきそうだった。
◎感想
✴︎イチゴの好きな私は、図書館の本棚でこのタイトルを見て、真っ先に手にして、イチゴと農場の描かれたイラストがとても気になった。
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植物を育てることは、私のような趣味で栽培していても、(我が家は巨峰の木があります)発芽してからは、毎日様子をみて芽かき、摘花、摘果、肥料や消毒とやることがあるけど、これを生業にしている人たちの仕事の厳しさを垣間見た感じがする。
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しかし、物語の中で自分で作り、自分で消費者に届けることを周りの人達の力を借りながら、進んでいく様子は、台風や病害虫という破綻のリスクも抱えていて、読んでいて、ちょっとドキドキも味わっていたように思う。
最後は、家族がどう生きるかだ、その決断のラストが清々しい。