読書記録 勿忘草の咲く町で
読書記録
勿忘草の咲く町で〜安曇野診療記〜
夏川草介さん著
角川書店、2019年
図書館でまた夏川草介さんの本が読んでみたくなり、手に取りました。アニメっぽい、ライトノベルのような表紙にもちょっと引かれました。
勿忘草は、私の好きな花の一つです。
◎あらすじ
主人公の月岡美琴(つきおか みこと)は、経験3年の20代の地域病院の病棟勤務の看護師。舞台は信州、北アルプス山脈を臨む安曇野だ。
美琴は夜勤明けのある日、病棟のナースステーションから、花瓶を持ってキョロキョロする見慣れない白衣の男性をみつける。
研修医の桂正太郎(かつら しょうたろう)だった。正太郎は花瓶の水を替えようしていた。
花の名前に疎い美琴は、
「鈴蘭ですか」と問いかけ
それが、2人のやりとりの始まりだった。
このあたりの病院では、看護師はまだいいが、医師は絶対数が足りないので当直制で、夜勤をあけても昼間勤務が続くことも多かった。
そんな日々の中、花瓶の水を気にする医師に出会い美琴は胸の内に温かいものを感じたのだった。
◎気になった箇所
✴︎
108ページ 内科部長 三島先生 の ことば
人が生きるとはどういうことなのか。歩けることが、大事なのか、寝たきりでも会話さえできれば、満足なのか、会話もできなくても心臓さえうごいていれば良いのか。
こういった問いに、正解があるわけではない。しかし正解のないこの問題に、向き合うことは、ぜひとも必要だ。
けれども今の社会は、死や病を日常から完全に切り離し、病院や施設に投げ込んで、考えることそのものを放棄している。
✴︎✴︎
182ページ 病院全体の緊急症例検討会で、美琴の発言。食事中、けいれん発作をおこして亡くなった患者さんの症例について
ご家族は、医療の素人で、私たちはエキスパートです。
エキスパートなら、エキスパートとして責任をもって事実を説明するのが、私たちの義務じゃないですか。
医療にもできることとできないことがあって、人は家にいても病院にいても亡くなるときは亡くなるんだときっちり説明するのが、私たち医療者の義務じゃないですか。
その義務を放棄してなんとなく丸く収めようとしているから、おかしくなるんだと思います。
◎感想
✴︎夏川草介さんの本は、神様のカルテ、そして2.3を読んだ。映画も見たので、若い医師が出てくると、櫻井翔さんのボサボサ頭と、シワシワ白衣がチラチラとしてしまったというくらいに親近感を持って読み進めた。
この本の中では、高齢者のためにどこまで医療は手を尽くすべきなのか、その指標になるのは、何なのか、日々問われる医療現場が描かれている。
高齢で認知症も併せもつ患者さんに、
人工呼吸器や胃ろうをして、最後の最後まで生きることをつきつめるのか、
それとも、、、。
命と日々向き合って、心身をすり減らして働いてくださっている医療従事者の方にこころから、感謝したい。
高齢化したり病気になって、自分の身が自分の意思では、思うようにいかないことになった時のこと、何をどこまでお願いするのか、自分でもしっかり考えておかなくてはと思う。
◎今日も最後までお読みいただき、ありがとうございました。