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「クリエイティブな仕事」は存在しない

「クリエイティブって、何も考えずに使ってますよね」

1年前、近所のマックで慶応の男子学生と会っていた。この日、初めてのOG訪問だった。何となく学生と会ってみようかな~~と思っただけで、伝えたい仕事の話があるわけでもなければ、自分の会社にぜひ入ってほしいわけでもない。話す内容も全く考えていなかった。それでも、まあ何とかなるだろうと考えていた。

訪問してきた彼は、いわゆる意識高い系の学生だった。運動部の主将を務め、興味のある運動科学に関する学生団体の立ち上げや、アスリートのための指導も積極的に行っていた。軸があり、自分の得意なことを理解していて、行動力もある。すごい学生だ。

実際に彼と会うと愕然とした。将来の夢や自分の課題、マネジメントでの悩みなどを理路整然と語るのだ。社会人3年目のわたしは今の仕事に精いっぱいで、マネジメントなんて考えたこともないのに……。か、敵わねぇ……。わたしは150円のカフェオレを飲みながら、正直焦っていた。何を言えばいいのだろう。わたしにできるのは何だろう。彼のためになりそうなことばが、びっくりするほど出てこない。でもそれを認めてはいけないような気がして、どうにか先輩面して持ちこたえていた。

ただ最終的に、社会人のわたしは無残に敗北する。きっかけは将来の話だった。彼が「将来はどんな仕事をしたいんですか?」と聞いてきた。就活生が社会人によく聞く、ありふれた質問だ。もし普通の学生相手だったら「いやーなんも考えてなくてさw いつかは転職すると思うけどw」と軽く話していた。でも相手は意識の高い学生だ。ほぼ負けかかっている相手だ。社会人らしさを見せるいいことを言わないと。そう思ったわたしは

「まだ考え中だけど、クリエイティブな仕事がしたいかなー」

と話した。その言葉に対し、彼は

「うーん……クリエイティブな仕事ってど、何も考えずに『クリエイティブ』って使ってますよね~~」

と言ったのだ。正確なことばは覚えていない。もう少しソフトだったかもしれない。ただどちらにしろ、彼の発言にものすごくイラっとした。いくら私のようなポンコツ社会人相手とはいえ、初対面の年上への態度とは思えない生意気さだ。生意気というか、人として失礼過ぎないだろうか?「確かにそうかも~~w」なんてヘラヘラ返答してしまったわたしだけど、怒りはなかなか消えなかった。

ただ、彼は決して違っていない。あの時「クリエイティブな仕事がしたい」と言ったけれど、正直何も考えていなかったから。当時の仕事は地道な営業や資料作りばかりで、非常に単調に感じていた。だから企画とか制作とか、おしゃれでかっこいい仕事がしてみたかったのだ。何1つ考えずに、憧れを一言で表せることばが「クリエイティブな仕事」だったのだ。

私は本当にクリエイティブになりたかったわけじゃない。うまくいかない仕事を忘れるために、「クリエイティブ」ということばを利用したのだ。もちろんわたしはクリエイティブになるための努力は全くしていなかった。何もしいなければ、当然「クリエイティブ」なわけがない。

本当にクリエイティブな仕事をしている人は、「クリエイティブな仕事」なんて言葉は使わない。「クリエイティブな仕事」という言葉は、傍観者もしくは遠くで憧れる人が用いる言葉ではないだろうか?就活生だった彼のことばは生意気すぎるけど、認めざるを得ない。生産的でクリエイティブな人間になるのなら、「クリエイティブ」のその先にある具体的な思いに向き合っていかないといけないな。

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