【SS企画】2022/12まとめ
文&絵サークル「雪と森」では、Twitter企画を開催しています。
毎月お題を変えてSSを投稿する「SS企画」。
今回は、年越し前に!
2022年12月のSSをまとめます。
2022/12「二人っきり」
雪村夏生
鉄扉を押し開ける。重苦しい軋み声の先に、黒いシルエットが見えた。鉄柵のない屋上で、あと一歩踏み出せば落ちてしまいそうな場所に立っている。わざと足音を立てる。
隣に並んでも視線すらくれない横顔は、夕日の強烈なオレンジの中でもわかる。返り血を浴びたままだ。顔洗えよ。指摘すると、なあ。口を開いた。
「こうやって街を見下ろしてるとき、なんだか俺たちだけのものになった気がしないか?」
同じように見下ろしてみる。米粒のような人や車、窓ガラスの明かり。確実に生活はあるが、音はここまで届いてこない。見知っているのに、知らない世界だった。
もう一度隣を見る。視線を眼下から外さない頭をひっぱたく。いってえな、何するんだよ。頭を押さえながら、ようやくこちらを向いた。
森羅愛美
みんながどこで降りるのか知らないままに乗り込んだ電車。 あ、私はここで。僕はここで。 お疲れ様です。お疲れ様です。
待て待て、今残っているのは 私と、大好きな先輩と、苦手な上司。期待と不安に胸が鳴る。 ああ頼む、どうか上司よ先に降りてくれ。
お疲れ様です~。 祈り虚しく颯爽と降りていく笑顔の先輩。 行かないでくれ。いっそ私もここで降りたい。無慈悲に閉まるドア。沈黙が重い。
2022年12月のSSでした。
今度のまとめは、年越し後の2023年1月。
また来月もよろしくお願いいたします。
SS執筆者紹介
雪村夏生
長編推理小説が中心の、自キャラオタク。推しに殺されがち。
いろいろな方の一次創作を応援する、マーケターになりたい。
好きなものは、ゆるキャラと魅力的な悪役、麻婆豆腐と和菓子という振れ幅で生きている。
Twitter:@do_nutu
森羅愛美
少し不思議な日常を中心とした小説と、水彩画などのイラストを描いている。エッセイや漫画もたまに。
好きなものはファンタジー、SF、着物、紅茶、音楽、アニメなど。
Twitter:@shinram0u0
文&絵サークル「雪と森」
(Twitter:@yukiandmori)
本記事執筆:雪村夏生
(Twitter:@do_nutu)