【SS企画】2023/01まとめ
文&絵サークル「雪と森」では、Twitter企画を開催しています。
毎月お題を変えてSSを投稿する「SS企画」。
今回は、2023年の始まり!
2023年1月のSSをまとめます。
2022/01「ときどき」
雪村夏生
君はいつだって誰よりもはやくきて、自習室に閉じこもる。ふくらんだリュックサックは明らかに許容量をオーバーしていて、うまく閉まっていない。いつもの窓際を選んで荷物を降ろす。窓から見える校庭では数人のユニフォーム姿がサッカーボールを転がしているが、君は目もくれず勉強道具を取り出す。書き込んだり、赤シートを使ったり、目をつむって覚えたことを頭の中で復唱したり。途中で自習室はいっぱいになるのだが、君が片づけを始めるころには誰もいなくなっている。
ふと、窓ガラスをたたく音がした。君は時計の針が間もなくチャイムの鳴る時刻を指すものだから、気にも留めない。けれど二度、三度と聞こえてきては振り向かずにはおれなかった。
窓の外には、ユニフォーム姿の君の同級生が立っていた。開けてくれ。頼んでいる。君は彼と大して親しくはなかったが、そっけなくする理由もない。開けてやる。
「いつもおつかれ」開けるや否や、彼は君にあめを差し出した。
森羅愛美
ときどきね、思うんだ。 この世はなんて絶望と怒りと悲しみに満ちていて、 醜く汚く、愚かな者ばか りなのだろうと。そして僕もなんてどうしようもなく無知で愚かで、駄目な人間なのだろうと。
でもね、ときどき君が音で、風で、言葉で、温もりで、光で、色で、僕の世界を美しく見せてくれるから。もう一歩も歩けないと思ったのに、ひと時の煌めく逃げ水を追いかけて足を踏み出すのだ。
2023年1月のSSでした。
今度のまとめは、2023年2月。
また来月もよろしくお願いいたします。
SS執筆者紹介
雪村夏生
長編推理小説が中心の、自キャラオタク。推しに殺されがち。
いろいろな方の一次創作を応援する、マーケターになりたい。
好きなものは、ゆるキャラと魅力的な悪役、麻婆豆腐と和菓子という振れ幅で生きている。
Twitter:@do_nutu
森羅愛美
少し不思議な日常を中心とした小説と、水彩画などのイラストを描いている。エッセイや漫画もたまに。
好きなものはファンタジー、SF、着物、紅茶、音楽、アニメなど。
Twitter:@shinram0u0
文&絵サークル「雪と森」
(Twitter:@yukiandmori)
本記事執筆:雪村夏生
(Twitter:@do_nutu)