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騙された

これは騙されたってことだよな?
そう思って良いよな?
俺は自分の心に問いかけた。


『なーお前って騙されたってどういう時に思う?』
昼休み隣にいた同級生の上野に俺は聞いた。
『あー?なん?お前誰かに騙されたの?』

上野はパックジュースのストローを口に加えて俺を見ながら話した。
『いや、そーゆーわけじゃないんだけど、お前ならどんな時“うわっ騙された“って思う?』

『うーん。そうだなぁ…そうそう!この前コンビニでチョコパン買ったらそれチョコ全然入ってないやつでさぁ、うわっ騙されたって思ったわ〜。あとは…社会科の松田が『ここは今度の試験で出るから覚えとけよ』って言ったからめっちゃ覚えたのに1問も出ないの!騙されたと呪ったわ…あーあとそれから…』


『もういい。もういい。お前の騙されたは、小さい。小さすぎる。』
俺は上野の話を遮って止めた。


『なんだと〜こいつー。』
上野は俺にヘッドロックをかけてきた。
俺は技をかけられながら1番前の窓際の女子“三島“を横目で見た。

三島は眼鏡をかけているおとなしいタイプの女子だ。休み時間は静かに本を席で読んでいて、あまり友達も多くない気がする。狭く深くタイプなのかもしれない。
それでもクラスでの役員をやったくれてたりして、みんなの役に立ってくれてるありがたい存在だと俺は日々感謝していた。



でも俺は見てしまったんだ。



数日前、三島に提出し忘れたノートを渡しに一度学校を出たにもかかわらず、俺はまた教室に戻った。
そして三島の席にノートを置いた。



その時、三島の机の中にいつも読んでいるカバーのかかった本があった。
本当になんの気に無しにその本を手にとって開いてみたら

その題名は



『プロレスの技の掛け方』だった。


ビックリして落としてしまった。


慌てて拾って机の中に戻してその場を立ち去りながら俺は見てはいけないものを見た事に頭がいっぱいになった



三島がプロレスの技の掛け方を勉強してどうするんだ?


いずれクラスのやな奴とかに仕返しするのか?

いや、高度な技でいろんなやつを倒してこの学校のNo.1にでもなるつもりか? 

いやいやいやのまさかまさかで、卒業したらそっちの世界へ行くのか?いやいやいやいや…

頭の中を妄想がぐるぐる回ってた。




その日から俺の頭は三島でいっぱいになってしまった。


三島は分かっているはずだ。俺は自分の名前の書いたノートをその時に置いてきてしまい。
しかも慌ててしまった本はきっといつもとは違って置いてあっただろう。

なのに、三島はいつもと変わらず本を読んでいて、たまに俺と目が合うと意味深な笑顔をしてくる始末だ。


きっと

三島は絶対俺にヘッドロックをかけている。




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