<文献紹介 第7段: ABCDEFバンドルの導入はICU入室患者のアウトカムを改善するのか?>
皆さんが日々実践されている「せん妄マネジメント」や「早期離床」をABCDEFバンドルとしてプロトコル化して、バンドルケアとして遵守率を高めていくと患者のアウトカムは改善していくのでしょうか?!
Pun, B. T., Balas, M. C., Barnes-Daly, M. A., Thompson, J. L., Aldrich, J. M., Barr, J., et al. (2019).Caring for Critically Ill Patients with the ABCDEF Bundle. Critical Care Medicine, 47(1), 3–14.
参考文献:https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/30339549
【目的】
ABCDEFバンドルがICU患者の予後を改善する結果は先行研究によって明らかにされている。しかし、単施設であったり、古いABCDEFバンドルバンドルを使用しているため、大規模調査を実施する必要がある。
【研究デザイン】
施設共同、コホート研究
【研究方法】
1.データ収集
施設:29州とプエルトリコから68のICU施設
期間:2015年8月から2017年4月までの20ヶ月間
・後ろ向き期間(6ヶ月):毎月ICUに入院した最初の5人のデータを収集
・前向き期間(14ヶ月):毎月ICUに入院した最初の15人のデータを収集
・収集期間:ICU入室7日間(期間内の転棟・死亡で終了)
2.対象者
・成人患者全てを対象とした
除外基準
・ICU入室後24時間以内のICU退室または死亡
・ICU24時間以内に積極的治療は望まないまたは緩和ケアのみ
3.アウトカム
介入方法
介入実施度は、以下のように定義しています。
1)完全な実施(すべての適格なバンドル要素を実施)
2)部分的な実施(バンドルを部分的に実施)
【結果】
患者数:15,226人
【対象者の状態】
・54%が人工呼吸器を装着し、中央値で60時間装着していた
・ICU滞在期間(中央値で3.5日)
・病院滞在期間(中央値9日)
・患者の85%が退院となっている
・患者の29%でせん妄が発症
・患者の15%で昏睡が発症
・患者の33%で身体抑制を使用
【ABCDEFバンドルの実施と患者アウトカム】
①全てのバンドルケアを実施した場合と部分的に実施した場合を比較すると、
全てのバンドルケアを実施した場合に、
・ICU退室が調整ハザード比1.17(95%信頼区間 1.05-1.30)
・病院からの退院調整ハザード比1.19(95%信頼区間 1.01-1.30)
・死亡調整ハザード比0.32(95%信頼区間 0.17-0.62)
・昏睡調整ハザード比0.35(95%信頼区間 0.22-0.56)
・せん妄調整ハザード比0.60(95%信頼区間0.49-0.72)
②バンドルケアの実施率が増加するとどうなるか
全てのバンドルケアを実施できていなくても、バンドルケア実施率が増加すると、
患者のアウトカム(ICUからの退室率、病院からの退院、死亡)は改善していた。
また、せん妄・昏睡の発症も低下する結果となっている(p<0.0001)。
【結論】
ABCDEFバンドルの実施は、生存率・せん妄・昏睡・身体抑制の使用などを有意に改善する結果となっている。
【私見】
小規模調査はこれまで実施されていました。この研究は15000人を対象にした大規模調査になっています。その結果、ABCDEFバンドルの実施が患者アウトカムの改善に影響を与えていることが明らかとなっていますので、ABCDEFバンドルの実施が患者アウトカムを改善することを示唆していると思います。ただ、この論文には患者の重症についての情報がありませんでした。
臨床では、「早期離床をやりたい!と思っていてもできない場面が多くあります。」ですので、全てのケアを実施することは困難な場合が多いと思います。
ただ、実施率の増えることで、患者アウトカムが改善する可能性を秘めていると思いますので、患者にとって必要なケアはスタッフで共有し、患者に関わっていくことが重要ではないかと思います。