摂食障害だったあなたへ。③~中学2年生のあなたへ。~
*以下、毎回この連載の試みの説明をいれていきます。
「もう知ってるよー」という方は下の~・~・~線のところまで飛ばして下さいね。*
これは過去16年間ほど摂食障害を患っていた私へ、現在の私がお手紙を書いてみるという試みです。
今はまったく摂食障害の症状が出なくなった私が、過去の私にお手紙を書いてみたら治った理由がわかるのではないか?
自分が過去の自分にお手紙を出すことによって、忘れていた出来事を思い出すことができ、そこを見つめることで私に更なる変化があるのではないか?もしくは何にも起こらないのか?
などの検証です。
詳しくはこちらをどうぞ。↓↓
今日はいよいよ親戚の叔母さんが魔法の薬をもってくるエピソードが含まれるお手紙です。
今の私が何を綴るのか、わからないまま進めていきます。
よかったらお付き合いください。
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中学2年生の幸江ちゃんへ。
どう?
もう中学校には慣れたかな?
中学1年の時のクラスは大変だったもんねぇ。
1年に1回クラス替えがあってよかったぁー!って心から思っているでしょ?
2年生になって、仲良しのお友達が急に増えたよね。
全くタイプの違う4人の子と仲良くなって、いつもそのグループで遊んでたよね。
みんながみんなのタイプの違いを認めて尊重しているような、素敵な友達だったね。
今残念ながらその子たちとの交流はないんだけど、思い出すとほっこりするような楽しい思い出の日々だよ。
そのグループの中によし子って子がいるでしょ?
その子に出会ってあなたは考えることがあったよね。
忘れていた出来事だったんだけど、今これを書き始めて思い出してるんだ。
よし子はちょっとだけぽっちゃりしている子だったね。
ほっぺもぷくぷくで、顔はお世辞にも整っているとは言えないけれど、なんだか憎めない愛嬌がある子だよね。
いつだってケラケラと笑っていて、口癖は「痩せたいぃ~」でさ。
でもお菓子とかバクバク食べて、菓子パンとか何個も食べるんだよね。
「また太っちゃうよぉ~。」と言いながらケラケラ笑うよし子を見て、あなたも一緒にケラケラ笑ってたよね。
あなたよりは全然太っていないけれど、小さくてぽっちゃりしているよし子は他の3人が細くて可愛かっただけになんだかあなたと同類のような気がしていたでしょ。
でもあなたはある日、よし子とあなたの決定的に違う面を発見してしまうんだよね。
よし子は仲良しの男子がたくさんいて、いつだって何人もの男子に囲まれていたね。
あなたは「なんで?」って不思議に思ったでしょ?
ぽっちゃりしていて綺麗でもなんでもない、成績だって良くないよし子が、いつだって男子に囲まれていることが。
他の3人の子の方が細くて可愛くて頭もよかったのに、どうしてよし子が?って思ってたでしょ?
あなたはこの時すでに『痩せて綺麗じゃないと愛されない』『醜い自分は愛されなくて当然だ』なんていう思いが強くなってきていたから、このよし子のことが理解できなかったんだよね。(すっごく失礼なこと考えてたんだと今は思うよ。中学2年のあなたは必死すぎてわからないかもだけれど。)
だからすっごくよし子を観察したし、自分の考えが間違っているのかも?って一瞬思ったんだよね。
ほんとはここにいろんなヒントが隠されていたのに、あなたは自分の考えが強すぎて「よし子と私は違うんだ。」「よし子はそのままで愛される人で私そのままじゃは愛されない人なんだ。」って結論付けたんだよね。
羨ましかったでしょ。
男子からも女子からも愛されている、いつだってケラケラ笑っているよし子が。
あなたもよし子のこと大好きだったもんね。
私もよし子みたいに愛されたい。
でもよし子みたいにはなれない。
だからやっぱり痩せなくちゃ。
って、その思いがどんどん強くなったよね。
学校ではみんなと一緒にケラケラ笑っているけれど、放課後部活が終わって帰る時はどんよりと自分の世界に埋没していっていたよね。
痩せたい。
痩せなければ。
痩せて綺麗になって愛されたい。
このままじゃダメだ。
さっきまでの自分とは別人のように、暗く、重く、思いつめていたよね。
それから、こんなことを思っていることが知られたら嫌われてしまうとも思っているでしょ?
学校で友達と一緒にケラケラ笑ってふざけている私が、こんなに暗く悩んでいるなんてことが知られてしまったら…って。
人の多面性を受け入れられなかったんだよね。
幸江ちゃん。
人ってね、いろんな面があっていいんだよ。
ていうか、それが普通なんだよ。
いつだって明るくて悩みがない人なんてどこにもいないんだよ。
でもそれがわかってくるのはもっと後のことだけどね。
でも大丈夫。
ちゃんとわかってくるから。
あれは中学2年の何月ころだっけ?
叔母さんが急に訪ねて来たでしょ?
殆ど家になんか来たことがない叔母さんから電話がかかってきて、お母さんが怪訝な顔をしていたよね。
「ゆきえがお家にいる時に来たいって言ってるのよ。何かしら?」
って眉間にシワを寄せて言っていた顔を今でも覚えているよ。
叔母さんは元スタイリストで綺麗な人だよね。
還暦を過ぎた今でも綺麗でおしゃれなんだよ。
あなたは叔母さんが大好きで憧れていたよね。
今も素敵だよ。
そんな叔母さんが家に来て、大きな容器に英語と女性のイラストが描いてある何かをバッグから取り出したんだよね。
「おばさん、幸江ちゃんのためにこれどうかと思って。」
って言いながら。
「幸江ちゃんだってそろそろ年頃だし、気にしてるよね?体型の事。」
叔母さんはニコッと笑いながら優しくそう言ったね。
あなたは叔母さんの言葉に、内心では「太ってるって笑われてるんだ。」って悲しくなっていたけれど、叔母さんの説明を聞いているうちに「あれ?これで痩せられるのかも?!」と心がどんどん揺らいできてたでしょ?
叔母さんはおかあさんにとても流暢に大きな容器の中に入っているプロテインの説明をして、その後小さな容器を3つほどだしてサプリメントの説明をしたんだよね。
「1日3食の内1食だけこれに変えて、それからこのサプリメントを3種類飲めば安心して痩せることができるのよ。」
「栄養面のことを心配してるんでしょ?これは完全栄養食だからこれさえとってれば成長期でも大丈夫なのよ。」
「しかも1食だけこれにかえればいいんだから。あとの2食は食べてもいいのよ。ね?」
叔母さんはお母さんの不安を払拭するためにいろいろ言ってたよね。
あなたはお母さんが眉間にシワを寄せたまま聞いているのをハラハラしながら見ていたね。
どうかお母さんがこれを買ってくれますように!
お願いお願いお願いお願い…
叔母さんの説明を聞いて「痩せられるかも!!」と希望が湧いてきたあなたはお母さんの様子だけが心配で心配で仕方がなかったんだよね。
「幸江ちゃんのためを思って言ってるのよぉ~。だって…痩せたいでしょ?幸江ちゃん。」
お母さんの眉間のシワと怪訝な様子が変わらないから、叔母さんがもう一度聞いてきたね。
あなたはドキドキしながら「…うん。…痩せたい。」と小さな声で呟いたね。
「うーん…。そうなの?幸江はやってみたいの?大丈夫?だって、毎日1食がこれになるのよ?やれるの?」
お母さんが不安そうな顔で聞いてきたけど、あなたは叔母さんが持ってきたこの方法しか知らないから「もうこれをやるしかないんだ!」と思って必死に言ったんだ。
「お母さん。私、これやりたい。痩せたいの。だから買って。お願い!」
お母さんはきっといろいろ考えたんだと思うんだ。
経済的にも裕福ではなかったから買うのも考えただろうし、それに成長期の私にこんなことをさせていいものか、とかね。
でも「わかった。幸江がやりたいっていうなら買ってあげる。でも無理しないで続けなさいよ。」って言って買ってくれたんだよね。
叔母さんが「よかったね。幸江ちゃん。頑張ろうね。」って優しく笑ってくれたこと、思い出した。
あなたのあの時の高揚感、すっごく覚えてる。
「やったぁぁぁぁぁぁぁぁぁーー!これで痩せられるんだ!これで綺麗で可愛くなれるんだぁぁぁぁーーー!!」
心の中でそう叫んでいたね。
あぁ。
それからのあなたの頑張りはすごかったね。
最初は朝ごはんの代わりにプロテインを飲んでサプリメントを飲んでたね。
お母さんがとっても心配してさ。
「朝ごはんこれだけなんて大丈夫かしら?なんか少しでも食べておいた方がいいんじゃない?」
って毎日言ってたね。
あなたは「いいの!そういうこと言わないで!」って毎回すっごく怒ってたでしょ。
「ちょっとは痩せきゃだめかしら…」とか言ってたのに「心配だから食べろ」って言うお母さんに不信感が募ってきたんだよね。
それからのあなたはダイエットの事をめちゃくちゃ勉強しはじめたね。
貯めておいたお年玉で『カロリーハンドブック』を買ったり、ダイエットのことが載っている雑誌を買ったり、テレビでダイエットのことがやってたらかじりついて見ていたね。
お姉ちゃんが高校生のころからダイエットをやっていたから、お姉ちゃんがもっているダイエット関連の本も読み漁ったよね。
朝のカロリー摂取はした方がいい。
摂取カロリーを減らすなら夜だ。
っていう情報を得てから、夜ご飯をプロテインに変えたんだよね。
その時のお母さんの心配っぷりはそれはそれはすごかったね。
「幸江が夜ご飯食べないっていうのよ!幸江が死んじゃうわよぉぉぉー!」って泣く勢いでお父さんやお姉ちゃんに言ってたのを聞いて「もーーー!!!」ってすっごく嫌な気分になったんだよね。
ダイエットをし続けていたお姉ちゃんが「大丈夫だよ。これくらいじゃ死なないから。幸江がんばってるんじゃん。」って優しく諭してくれたんだよね。
お姉ちゃんに感謝だね。まぁお母さんにもだけどね。
プロテインとサプリメントを飲み始めて半年くらい経った時かな。
お姉ちゃんが「あれ?幸江痩せたじゃん。背中が全然違う。」って言ってくれたでしょ?
あれさ、めっっっっっちゃ嬉しかったよねーーー!
「え?ほんと?!!」
って聞いたらさ、「うん。あれ?膝の骨でてきてんじゃん。すごいね!」ってまた嬉しいこと言ってくれてさぁ。
「うわーーー!!やったぁーーー!!」って何度も何度も膝の骨を触ったんだよね。
『痩せる』という喜びを始めて知った瞬間だったね。
それからますますのめり込んでいったのは仕方がなかったことだよ。
だってすっごくすっごく嬉しかったんだもん。
ここから始まったんだよ。
あなたのダイエット人生は。
お腹が空いても頑張ってガマンしたね。
いつだってカロリーを気にしながら食べ始めたね。
まだ14歳か。
必死なんだよね。
お腹が空く年頃なのに、空腹をおしゃぶり昆布とかでガマンしてさぁ。
偉いよ。幸江ちゃん。
「なんで美味しいものはカロリーが高いんだろう?」ってシクシク泣いたことも何度もあったよね。
あなたになんでそんなに頑張ってるの?って聞いたらなんて答える?
「だって痩せなきゃ誰からも愛されないでしょーーーー!!!」
「醜いままじゃお父さんもお母さんも恥ずかしい思いするでしょーーーー!!」
…そんな返事がすぐ返ってくるよね。うん。
聞いてくれないと思うけど書くね。
聞いてくれないと思うけど、聞いてね。
あなたの頑張りはすごいです。
育ち盛りの14歳。しかも食べることが大好きなあなたが一生懸命ガマンしている姿を思い出しただけで泣けてきます。
あのね、今これを言ったってわからないと思うし、痩せることが悪い事だっていう意味じゃないんだけど、書いておくね。
あのね、痩せることと愛されることは全然関係ないんだよ。
痩せなくても愛されるし、実はもうすでに愛されてるんだよ。
わからないよねぇ。
よし子がヒントだったんだよ。
もう一度書くね。
痩せることと愛されることは全然関係ないんだよ。
これがなかなかわからなくて、あなたはこれから大変なことになっていくんだけど…。
あ、怖がらせちゃってごめん。
痩せるのを止めろって言ってるんじゃないんだよ。
あなたのこの時の頑張りがあって、今の私があるんだからさ。
でもね、愛する幸江ちゃんが苦しんでいるかと思うと言いたくなっちゃうんだよ。
私はあなたが愛しいのよ。
大好きなの。
信じられないでしょ?
だって中学2年の今のあなたはあなたが大嫌いだもんね。
もう一度、いや、何度でも抱きしめておくね。
それしかできないからさ。
きゅうりが11キロカロリーって書いてあった?
だから塩で食べる?
食べた後、11キロカロリーも採っちゃった…って落ち込んでるよね?
それさ、もう病気の始まりなんだよ。
始まっちゃったね。
とうとう始まっちゃったんだね。
辛いよね。
思い出しただけで辛いよ。
でも大丈夫だから。
毎回書いているけど大丈夫だからね。
辛そうなあなたを私が抱きしめておくから。
これからもっとしんどくなっていくあなた。
ずっと私が抱きしめておくからね。
大丈夫。大丈夫。
大好きです。心から。
また書くね。またね。
背中ポンポンってしておくね。
44歳の私より。
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