もっと抱きしめてやればよかったタロウのこと②
タロウの言動がクラスをかき回していること、
私がそれに手を焼いていること...
それにいち早く気づいた1人の保護者(お母さん)がいた。
そのお母さんは、
毎日愛娘が学校から帰宅する度に
『あんた、今日は学校で嫌なことなかった❓』
と聞く人だった。
『嫌なことなかったか❓』と親に毎日聞かれる子供は、「自分が嫌だったことを伝えた方が、親が喜んでくれる」ということにじきに気づき始める。
だからもちろん、
そのお母さんはあっという間にタロウの存在に気づき、怒りの矛先を私に向けた。
一学期最後の日の晩。
私はそのお母さんと、学年主任の先生と一緒に学校の相談室でひたすら話をしていた。
どうしていいか分からず、涙も出ない時間だった。
ただ、目の前にいる○○ちゃんのお母さんが、「私のことを憎いと思っていて、いなくなって欲しいと思っているのだ」と感じていた。
⚫︎この先生では、子供らをしっかり指導できるとは思えない。“みんな”がそう思っている。
⚫︎“みんな”がタロウを嫌っている。
あの子はショウガイシャでしょ?私は自分の子供に、言っても言っても聞かない、悪いことを反省して直せない子はショウガイシャだと教えている。
⚫︎私は昔子供の頃、死ぬほどいじめられた経験がある。だから、理由なく相手をいじめる人間のことを私は絶対に許さない。
⚫︎“みんな”がこのクラスを嫌だと言っている。このクラスを解体して欲しい。
このお母さんの心に怒りと悲しみの炎を一気に焚き付けてしまったのは、その日の私のたった一言。
『タロウも、ほんまに悪い子ではないんです』
その言葉だった。
今になれば分かる。
なんで私は何より真っ先に、そのお母さんの辛さ、悲しさ、苦しさに向き合わなかったのか。まずなにより先に、それを受け止めうとしなかったのか。
その時の私は若かった。
今の私には十分できることが、あの頃の私には分からなかったし、できなかった。
だから今改めて思う。
ほんまにごめんなさい。
お母さんが口にした言葉も、決して全て許されるものではない。でもそれを言わせてしまった私に責任があると思ったし、今もそう思う。
お母さんは、ほんまにほんまに辛かったはず。ずっと一人ぼっちで。
だけど当然ながら、
『みんながこのクラスを解体して欲しいと願っていて、私の力のなさに失望している』
そう言われたことで、
私の心は目に見えてズタボロになった。
お母さんが言ってる“みんな”って誰?
冷静に考えればそう思える。
だけど若い私は、名も分からず、存在するかさえ分からない“みんな”に怯えた。
〜続く〜
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