もっと抱きしめてやればよかったタロウのこと④
タロウが相変わらず授業中に暴れて、大騒ぎした後のこと。
私はその日も、タロウにブチギレた。
他の子供達に自習を伝えて、隣のクラスの先生にも様子だけみておいてくださいとお願いして、大暴れするタロウを引きずって、教室を出た。
私は泣いていた。
『もうこれ以上、あんたを守りきれん❗️先生、どうしてええか分からん❗️あんたはどうしたいの⁉️どうなりたいの⁉️先生、もう分からん‼️』
私の顔を見て流石にやばいと思ったのか、タロウが
『ごめんなさい❗️先生ごめんなさい❗️ごめんなさい‼️だから許して‼️僕が悪い‼️だからゆるして‼️ごめんなさい‼️』
そう言って泣いた。
2人で泣いた。
今なら分かる。
タロウはめちゃくちゃに寂しかった。そこに彼自身の特性も重なって、もうがんじがらめでひたすら苦しんでいた。
一番辛かったのは、タロウ。
ただただタロウをひたすらに愛して可愛がって、抱きしめてやればよかった。だけどその時の私にはそれができなかった。
私自身も、愛すること、愛されることがどういうことなのかよく分からないまま成長してきた人間やったから余計に。
2年生になる前の3月。
タロウはお父さんと共に転校の挨拶に来た。
あれだけ嵐のようやった一年間が、突然終わった。
「いろいろ迷惑しかかけませんでした。親子共々、ほんまにすみませんでした。でも息子は先生のことが大好きやってゆうてて、私も先生が担任でよかったと思っています。お世話になりました。」
そう言って、2人は風のようにいなくなった。
私は最後まで
「力不足で、こんな私で、本当にすみませんでした。」
ひたすら謝っていた記憶しかない。
苦しくて、悲しくて、ひたすら無力だった。
一年生、クラス最後の終業式。
毎年クラス替えがあるので、このクラスももうこれで終わり。
「来年もこのクラスがええなー❣️」
「来年も先生のクラスにさしてーなぁー❣️」
クラスの子供らだけが、謎なほどに陽気で癒された。
『“みんな”、このクラスと担任をよくは思っていない!』そう言われた私だったけど、
その母さんに賛同する人は結局1人もおらず、
むしろ
『先生、1人でよー頑張ってきたな!私は見てたよ!ずっと味方よ!!応援しかしないよ!』
そんな風に励ましてくれるお母さん達がほんまに多くて、そのお陰でどうにか崩壊することなく一年間を終えることができた。
「このクラスを解体して欲しい!」と言い放っていたお母さんの娘が、最後の最後に、私のところにこっそりやってきて「うちな、来年も先生のクラスがええねん!」と言って帰った。
「そうかぁ!ありがとうな!そうなるとええなー!」とニッコリ笑って返事したけど、「ごめんな、それは無理やわ笑」と心の中では思っていた。
子供が幸せならそれでええということはない。
親も子供も、みんな幸せやないとあかん!
遠い空の下で、
タロウも高校を卒業したんかな。
元気に、笑って卒業してたらええな。
そんなことを思う、12年目の春。
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