【声劇フリー台本】からっぽ

おそらく陰鬱というのが正しい一人用台本です。
からっぽな自分とひたすら自問自答を繰り返します。
苦手な方はご注意ください。

御利用の際は利用規則をご一読くださいますようお願い申し上げます。


【利用規則】


◆この台本の著作権は全て影都千虎に帰属しています。

 商用・非商用問わずご利用いただけます。
 ご自由にお使いください。

 利用時のご連絡は任意ですが、ご連絡をいただけますと大変励みになりますし、喜んで影都千虎が拝聴致します。

 音声作品には以下を明記するようお願いいたします。

・作者名:影都千虎
・当台本のURLまたは影都千虎のTwitter ID
(@yukitora01)

 配信でのご利用も可能です。
 配信で利用される際には、上記二点は口頭で問題ございません。

 また、配信で利用される場合、台本を画面上に映していただいて構いません。

 台本のアレンジはご自由に行いください。
 便宜上、一人称・二人称を設定しておりますが、いずれも変更していただいて問題ございません。

◆無断転載、改変による転載、自作発言は絶対におやめください。


【台本】


 なにもない。
 本当になにもないんだ。

 悲しいことがあったわけでも、辛いことがあったわけでも、苦しいことがあったわけでも、嫌なことがあったわけでも無い。
 なんにもない。
 ただ、同時に楽しいことも嬉しいことも無くて。

 いや? 楽しいって思ったことはあったような気がする。
 その瞬間、その場だけは楽しくて、僕も一緒になって笑っていた気がする。
 でも本当に楽しかったのかどうかは分からない。
 僕は果たして、楽しんでいたのだろうか。


 ただひたすらになにもない。
 からっぽだ。


 ずっと楽しみにしていたことがあった。
 楽しみだったはずだった。
 でも、今ではそれが億劫おっくうで仕方ない。

 僕は本当に楽しみにしていたのだろうか。


 ずっと好きなものがあった。
 本当に好きで好きで仕方なかったはずだった。
 でも、今ではそれに向ける熱意のようなものが無い。

 僕は本当にそれが好きだったのだろうか。


 つい最近までは確かに持ち合わせていたはずなのに、どうして今はどこにもないんだろう。
 もしかして、最初からそんなもの持ち合わせていなかったのだろうか。
 だとすれば僕は、本当になにもない。


 熱意が欲しかった。
 特別と思う気持ちが欲しかった。
 特別と思われてみたかった。
 楽しいと思う気持ちが欲しかった。
 楽しいと思わせてみたかった。

 あれもこれもと欲しがる子どもの様なわがままがふとよぎることがある。
 なにを考えているのやら。馬鹿馬鹿しい。
 そんなこと、出来るはずもないのに。


 みんなを見ていると何も持たない自分がみじめに思えてくる。
 みじめ?
 そんなことを思うだけの感情があっただろうか。


 自問自答を繰り返しても、いちいち自分の答えに疑問を持つ自分がいる。
 あまりにも不毛なやり取り。
 なんて無意味なんだろう。
 無意味で、無価値で、無駄で。
 必要のないことをどうして繰り返し続けるのだろう。


 きっと、うだうだとよく分からないことを考え続けるのは、脳がぐらついているせいだろう。
 どうせ寝れば治る。
 いつもそうだ。一晩寝れば、次の日には元通りになっている。


 そんなことを思っていた筈だったけど、日を追うごとに僕からは何もなくなっていった。
 いや、ごちゃごちゃと考えて何かある振りをしていただけなのだろう。
 それが無くなっただけ。多分そういうことだ。


 ふと、自分が何をしているのかよく分からなくなる。
 自分はどうして今こんなことをしているのだろう。
 こんなことをしたところで、何の意味も無いのに。

 そうしている内に、自分の思考がループし続けていることに気付く。
 何度同じことを繰り返せば気が済むのだろう。
 いい加減飽きてきた。つまらない。


 面白味も何もない、ただのがらんどう。それが僕。
 居ても居なくても変わらない、居たとしても最初から居ないようなもの。


 辛いなんてことはない。
 辛くもないし、悲しくもないし、苦しくもない。
 この程度でそんなことを言える筈もない。言っていい筈もない。
 世の中にはごまんと、もっと辛くて悲しくて苦しい思いを抱えている人がいる。
 僕ごときが、僕程度のものが、軽々しくそんなことを言うべきじゃない。
 それはただ己を可哀想だと悲劇に酔っているだけだ。やめておけ。
 苦しいと自惚うぬぼれるな。こんなのはよくあること。


 大丈夫。
 これもきっと、すぐに消えて何も無くなる。

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