【声劇フリー台本】枯れた泉
泉が枯れてしまい、焦燥感をただただ募らせる台本です。
陰鬱に限りなく近いので苦手な方はご注意下さい。
ご利用の際は利用規則をご一読くださいますようお願い申し上げます。
【利用規則】
◆この台本の著作権は全て影都千虎に帰属しています。
商用・非商用問わずご利用いただけます。
ご自由にお使いください。
利用時のご連絡は任意ですが、ご連絡をいただけますと大変励みになりますし、喜んで影都千虎が拝聴致します。
音声作品には以下を明記するようお願いいたします。
・作者名：影都千虎
・当台本のURLまたは影都千虎のTwitter ID
（@yukitora01）
配信でのご利用も可能です。
配信で利用される際には、上記二点は口頭で問題ございません。
また、配信で利用される場合、台本を画面上に映していただいて構いません。
台本のアレンジはご自由に行いください。
便宜上、一人称・二人称を設定しておりますが、いずれも変更していただいて問題ございません。
◆無断転載、改変による転載、自作発言は絶対におやめください。
【台本】
泉が突然枯れてしまった。
枯らしてはいけないものだったのに、枯らさないよう僕は頑張り続けていたのに、そんな僕を嘲笑うように水が一滴も出なくなってしまった。
ダメだ……ダメだ、ダメだ！
はやく、早く何とかしないと。どうにかして泉を元に戻さないと。
誰かに見つかる前に早く……早く！
枯れた泉を誰かに見られてしまったら、きっと後ろ指をさされる。
「やっぱりあの子はダメだった」
「あいつは何にも出来ない奴だ」
「そんな簡単なことも出来ないなんて」
「努力が足りてないんじゃないの」
「最初から期待してなかったけどね」
どこからともなくそんな声が聞こえてくる気がする。
クスクスと僕を嘲笑う声が。
やめろ……僕をそんな目で見るな……！
嫌だ、失望しないでくれ……っ
頑張るから……まだ、ちゃんとやれるから、だから！
がむしゃらに動き回って、考えて考えて考えて、やっとの思いで枯れた泉に水があるように見せかける。
人並みに見せかけながら、泉を元に戻す方法を探し続ける。
それと同時に思うんだ。
どうして僕は何をやってもダメなんだろう。
みんなと同じように出来ないのはどうしてだろう。
いつまで頑張り続けたら人並みになれるのだろう。
気付いたときには両足が動かなくなっていた。
だけどまだ、泉は元に戻っていないから頑張らないと。
腕がまだ動くなら大丈夫。僕はまだ、動ける。
出来ない姿を見せるわけにはいかない。
出来ない、なんてことがあってはいけない。
出来ることが当たり前なのだから、出来ることを期待されているのだから、僕はそれに応えないといけない。
期待を裏切ってはいけない。だってそれを望まれているから。
それが唯一の僕の価値になるのだから。
ダメだダメだと言われ続けるのはもう嫌だ。
なんにも出来ないんだねと冷たい目で見られたくない。
他のみんなは出来るんだ。
自分だけが出来ないなんて耐えられない。
「あの子はもっと出来たのに」
「どうしてもっと頑張らないの？」
「そのぐらい出来て当然だよ」
「せめて努力ぐらいしなよ」
「甘えるな」
そんな言葉が頭から離れない。
そうだね、その通りだよ。
でも、そう言われるとどうしようもなく苦しいんだ。
……なんて、嘘嘘。違う違う。
弱音なんて吐いてる暇があるなら動かないと。
そう言われたくないのなら、その期待に応えられるよう努力するのが普通、だよね？
ねぇ、頑張り続けていたら、いつかは誰かが僕のことを認めてくれるかな……？
「すごいね、よく頑張ったね」って、誰かが褒めてくれるかな？
そうだったらいいな。そんな日が来たらいいな。
そんな日がいつか来るのだったら、どんなに苦しくてもまだ頑張れる気がするんだ。
枯れた泉はまだ戻らない。
見せかけだけの水はまだ残っている。
泉が枯れたと気づいている人はまだいない。
まだ間に合う。まだ失望されていない。
次こそは上手にやろう。
これがどうにかできれば、きっとまた──
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