小説|薔薇垣の聖母子(前)
原罪のとげなき薔薇にかこまれて贄の吾子だく聖母の原罪
「母上ーっ、行ってまいります!」
小さな身体に不釣り合いなほど大きな黒のランドセルを背負って、わたしに声をかける。
「気をつけていってくるのですよ。」
その柔らかな頬にくちびるをよせた。
「はいっ!かならずや生きてもどってまいります。母上!」
給食袋が元気よく揺れ、ドアがパタンと閉まった。
朝恒例の小芝居。
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結婚して1年が経った頃。
必ずといっていいほど28日周期できていた生理が遅れていた。
仕事帰りに