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ストックオプションでは億万長者になれません

こんにちは。大平(@yohira_dev)です。

今回はベンチャー企業に入社するともらえることがあるストックオプションについて解説していきたいと思います。

転職エージェントや転職サイトの記事では「ストックオプションを持つと上場時に莫大な利益を得られる可能性がある!」と喧伝され、それに釣られて前職の年収からダウンするようなベンチャー入社を決めた人もいるのではないでしょうか。

まぁ記事タイトルの通り、私の主張としては「ストックオプションで人生上がるのはほぼ無理ゲーです」という感じなんですが、今回はその理由について解説していきます。

X(Twitter)で64万回見られた投稿がこちら。



ストックオプションの基本ルール

ストックオプションとは、株式会社の従業員や取締役が、自社株をあらかじめ定められた価格で取得できる権利です。

ストックオプションで儲かる仕組み

ストックオプションで利益を出す仕組みについて簡単に説明します。(本質的な流れを重視するため数字は本当に簡単にしています。実際の実務ではもっと複雑な数値になります)

・上場を目指すベンチャー企業A社は総株数10000株のうち10%をストックオプションとして割り当てる。
・Bさんは採用条件として、ストックオプションのうちの1%(つまり100株)を1株100円で行使できる権利を得た。
・A社が晴れて上場し、株の価格が1株あたり10000円になった。
・Bさんはストックオプションを実際に行使し、100株を100円で総額1万円購入した。
・Bさんは取得した株を即日株式市場に売りに出し、1株10000円で100株、つまり100万円で売った。
・Bさんは差し引き99万円のプラスになった。

大体こういった流れです。

税制適格ストックオプションとは

さて、ストックオプションの売買は株式の売買やFXと同じ「有価証券の取引」なのでどんなに利益が大きくても税率20%です。

…と言いたいところですが。

ストックオプションの売買を税率20%に収めるためにはさまざまな要件を満たす必要があります。これを「税制適格要件」と言います。

税制適格については詳しくはこちらの記事が参考になります。

特に痛いのが「年間1200万以上行使できない」という行使条件。

一撃ガツンと売って利益確定して悠々自適、とはいかないのです。

まだストックオプションが残っているのに株価が下がって含み益が溶けてしまう、というリスクもあります。

なお税制適格でないストックオプションの場合は「給与所得」とみなされ、最大55%の税率がかかります。ほげええええええ。

上場するためには従業員に配られるストックオプションは10%前後

上場審査を通すためには、ストックオプションの発行上限は総株数の10%前後が上限と言われています。

これ、「あなた1人が10%」というわけじゃないですよ。「全従業員で合計した割合が10%以下」ということです。

ストックオプションを発行する側としては「上場までの将来入ってくる従業員の可能性も考慮して発行」しなければならないので、必然的に実際に付与されるストックオプションは少なくなるでしょう。

一度発行したら取り返しができず、今いる従業員に配り過ぎてしまうと「これから入ってくる人の持分がない」→「採用に障害」という悪循環に陥ってしまうので慎重になります。

体感としては「めっちゃ仕事ができて実際に成果出してる人」の最大値がSO1%くらいで、「転職のエサとして使われる」のは0.2%くらいが相場だと思います。

生涯賃金である3億円をストックオプションで稼ぐためにはどのくらいの企業価値が必要か

さて、もう前段までで暗雲が立ち込めていますが、一応シミュレーションしてみましょう。

「生涯賃金をストックオプションだけで稼ぐにはどれくらい企業価値が必要?」

前提として、ストックオプション割り当て0.2%、行使価格1円(実質タダ)で考えてみましょう。(そもそもこの仮定自体が楽観寄りです)

ベンチャー企業はガチのユニコーン以外は基本的にマザーズでの上場を目指すと思いますが、マザーズの時価総額ランキングがこちら。

2023/10/01 時点でのマザーズ時価総額ランキング

一位のビジョナルが2948億、上位9位からは時価総額1000億を割ります。

0.2%の持分で3億を得るには時価総額1500億、すなわちランキング第三位のカバー以上に会社を育てる必要があります。

注意して欲しいのがこれは「上振れ」の話をしているのであって、、、ほとんどの会社は上場さえできないし、ランキングに入れなくたって上場するだけで偉業なのです。

ちなみに、IPO時の時価総額は中央値100億弱です。

2013年から2019年に日本の新興市場(マザーズ、ジャスダック)に上場した企業の株価時価総額の中央値は、IPO直後期が83億7500万円で、直近(2021年3月30日)では95億2600万円。時価総額の成長率を中央値で見ると、1期間で-2.1%、3期間でも3.0%という数字になっている。一方平均値で見れば、時価総額はIPO直後期が162億4700万円で、直近では298億3800万円。

https://signal.diamond.jp/articles/-/834

IPO直後の売り抜けでは2000万円くらいしか入ってきません。(譲渡制限ついているのでそれすら不可能ではありますが)ここに20%課税だと手取りは1600万円弱です。

1000万円超の金額だと「それでも貰えてんじゃん」と思うかもしれませんが、「そもそも上場できない可能性の方が高い」「上場には数年以上の長い時間をかける必要があるのに一回きりのボーナス」と考えると、割に合うかは微妙なところです。

特に現職より年収がダウンになるようなオファーは慎重に検討した方が良いです。下手すると「転職しなければ数年間で得られたはずの給料」を回収できなくなる恐れがあります。

リターンを最大化するための戦略としてもっと早期からコミットして持ち訳0.5~1%を目指すという道もありますが、破綻するリスクとトレードオフです。

結論として「ストックオプションで人生上がるのは、やはり超難しい」ということになります。

ストックオプションはM&A時のリターンを保証しない

ストックオプションは普通の株と違い、M&Aによって会社が売却された時に紙屑になるリスクがあります。

良心的なケースだと買い取ってもらえるケースもあるとは聞きますが、特に契約書に明記していない場合はあまり甘い期待をしない方が良いですね。

普通株を持っている創業者やVCは利益確定のためにEXIT、ストックオプションだけ持ってる従業員は権利消滅。。。というケースがあり得ます。ゆえに普通株を保有するよりリスクが高いとされます。

普通株を持つには直球で「自分で会社を建てる」ということに真剣に向き合っていく必要があります。

フリーランチは存在せず、リスクを負うものはその度合いに応じたプレミアムを受け取る権利がある。

起業にはリスクがあると皆言いますが、生株を売却できる、という意味においては創業者は割とリスクヘッジできているのかもしれません。

まとめ

  • ストックオプションでもらえる金額は(外れ値を除いて)現実には多くない

  • 一撃億万長者になるとかは無理ゲー

  • 自分で会社を作って生株を保有しよう


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