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『売上の地図』が教えてくれた、クリエイティブの力とビジネスの全体像

「ビジネスに関してこんなに無知だったなんて……。でも、自分の役割がより明確になった」

これはトライバルメディアハウス池田紀行さんの著書『売上の地図』を読んだ率直な感想だ。
これまで多くのプロジェクトや施策に関わり、ライティングの仕事を通じて企業価値の向上に努めてきた。自分に求められていることや役割は理解しているつもりだった。

ライティングの仕事をしているみなさんも、
「企業の強みをことばにする」
「認知を広める」
「商品やサービスのよさを伝える」
「人の魅力を伝える」
「好意をもってもらう」
「記事を通して勇気づける」

といった目的のために、原稿やコピーを書いているのではないだろうか。
あれやこれやと考えては悩み、もがき、書いては消し、書いては消しを繰り返し、少しでもいい原稿になるように頭をフル回転させていると思う。
自分のように自信過剰と自己嫌悪の往復バスに乗っているひともいるかもしれない。

でも、ある日ふと思った。
ライティングの仕事を通じてクライアントのビジネスに貢献をしたいという気持ちは常にあるものの、実際にクライアントの「売上」について自分はどれほど考えてきたのだろうかと。
原稿やコピーを納品することで仕事としては完了するのだが、売上までの道筋を明確にことばにできない自分がいた。

ビジネスのことをわかっているようでわかっていない……。
視野が狭い。狭すぎる。
だからこそ『売上の地図』を手にしようと思った。

売上の構造を知る

企業の売上には「2つの売上」がある。
「トライアル売上」と「リピート売上」だ。
企業はお客さまに商品の購入またはサービスを利用していただく「トライアル売上」と、その後も継続して購入・利用していただく「リピート売上」を上げることを目的に活動している。

これほどあたりまえに思える売上であっても、その「構造」を正しく理解していなければ、さまざまな施策をおこなったところで期待する成果に結びつかず、結果としてお金や時間、労力を消費してしまう恐れがある。
心当たりがある人もいるかもしれない。

書籍では売上の構造を約20個ほどの「要素」に分解しており、各要素の役割や関連を説明してくれている。さらに各要素には細かな施策があり、どのような施策にどのような効果があるのかまで解説している。
話のベースとしてはBtoCメインではあるが、BtoBに関わる人でも知っておいて損はないと思う。

ここでのポイントは、「売上の全体像を理解する」ことからすべてがはじまるという点だ。

『売上の地図』はマーケティングの書籍ではあるが、伝えることを仕事にしている人にとって自分たちの役割は「マーケティングコミュニケーション」に深く関わっていることを再認識させてくれる。

著者が定義するマーケティングコミュニケーションとは、
「お客さまの意識・認識・態度を変えることによって、購入の意向を高めること」である」。

この「購入の意向を高める」ということばが大きな意味をもつと考えている。
一方的に情報を伝えるのではなく、知らなかったものを知ってもらい、興味のなかったものに興味を持ってもらい、商品やサービスの特性を正しく理解してもらい、好意や信頼に結びつける。つまり、マーケティングコミュニケーションとはお客さまのなかに「買いたい」「利用してみたい」という気持ちをつくりあげていく活動である。
まさに自分の仕事のド真ん中と言える。

代表的なマーケティングコミュニケーション施策は、以下の4つのメディアに分けられる。

①ペイドメディア(マス広告/ディスプレイ・動画広告/検索連動型広告)
②アーンドメディア(狭義・広義のPR/戦略PR)
③オウンドメディア(コーポレートサイト/ブランドサイト/コンテンツサイト)
④シェアード/ソーシャルメディア(SNS/クチコミ・レビューサイト/動画共有サイト)

実際にはライティングといっても上記メディアだけに限定されるものではないが、売上の地図やファネルマップ(購入プロセスを図にしたもの)をもとに、自分の領域を俯瞰して見てみると新たな発見があるかもしれない。自分はこのプロセスに大きく関与していて、こういう効果を目指していくんだなとあらためて意識することができるだろう。

マーケティングコミュニケーションの限界

とはいえ、マーケティングコミュニケーションの効果にも限界がある。各メディアには得意・不得意な領域があることを理解しておかなければならない。
たとえば、さまざまなマーケティングコミュニケーション施策により、一度は商品を買ってもらったりサービスを利用してもらったりすることはできる。

しかし、リピート購入やリピート利用については、購入意向を高めるだけでは実現が難しい。どれほどマーケティングで「トライアル売上」を獲得できたとしても、実際に商品やサービスそのものに満足してもらえなければ、「リピート売上」には直結しない。

「期待していたほどじゃない」「次は別のものを試そう」といったように、お客さまが商品やサービスに価値を感じなければ、自然と離れていってしまう。
リピートの売上は商品やサービスの「パフォーマンス」に依存していることを認識しなければならない。

この視点を持つことで自身の担当する施策の強みと弱み、そして「できること・できないこと」を明確に理解できるようになる。
その結果、クライアントとの関わり方や社内での提案もより最適なものになると思っている。
そのためにも、まずは「売上の全体像を理解する」ことを忘れてはならない。

流行りの施策や個別の施策に手をだしたくなる気持ちも十分にわかる。でも、全体像を無視してやみくもにSNSでのバズり方やコンテンツマーケティングなどの個別施策を深堀りしてしまうと、気がづいたときには自分が落ちる真っ暗で深い穴を掘っていたなんてことになるかもしれないので注意が必要だ。

実生活への応用

『売上の地図』を読んでマーケティングの知識のみならず、ひとりの消費者としての行動にも目を向けるようになった。だが、情報を知っただけでは借り物の知識のため、自分で「わかる」ようにしなければならない。
具体例を抽象化し、ふたたび具体的に自分の中に落とし込んでいかなければ知識としては身につかない。

たとえば、とあるペットボトルの「水」を買っているとする。
このペットボトルは、飲み終えたあとに手で簡単につぶせるのが特長だ。
ペットボトルをつぶして小さくできるため、他のペットボトルに比べてごみの保管場所が節約できる。ごみ袋に入れるごみの容量が減るため、ごみ出しの回数が減る。
結果として日常のごみ出しのストレスと「ネガティブな感情」を軽減できる。

こうした消費行動(心理)の背後にある心理や状況を意識することで、お客さまがどのような状況でどのようなことを思い、なにを考えているのか、といったことが見えてくる。
原稿やコピーにおける表現の精度が高まり、お客さまの感情が動くメッセージを届けられるようになるだろうと確信した。

とはいえ、今回の学びはビジネスの全体像を知っただけなので、まだまだと言える。ここから実践を通して自分のなかで概念や理論を解釈し、知識を身につけてスキルアップにつなげたい。そして、顧客体験をよりリアルに、詳細に捉え、コピーで直接アプローチできるようになることを目指していきたいと思う。

余談:池田紀行氏のオンライン講座『MARPS』

ちなみに、著者の池田さんはマーケティングに特化した無料オンライン講座『MARPS』を運営している。
これは本当に超有料級の講座で、これ無料で提供していいの?というレベルである。各分野の第一線で活躍する講師陣が登壇し、有益な情報を提供してくれている。

マーケティングに興味がなかった人でも、ビジネスパーソンとして知っておくべき知識が盛りだくさんなので、気になる方は一度チェックしてみてほしい。

最後に、USJをV字回復させたことで有名な株式会社刀の森岡さんが言う「自分が成長することでだれかの価値になる」という言葉を胸に、クライアント、そしてその先にいるお客さまのお役に立てるよう日々努力していこうと思います。

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