「ケイド・ルオトロはなぜあんなに勝ちまくれるのか?」いま世界で1番強い柔術の秘密を徹底解剖!
グラップラー・高橋“SUBMISSION”雄己が今の格闘技シーンで気になるテーマをピックアップ。
フィジカルトレーナー・森安一好が解剖学の視点から深掘り解説していきます。
第四弾は、2年前のADCC、先月のCJIと、グラップリング界世界最高の栄誉を手にしたケイド・ルオトロの試合を元に『いま世界で一番勝っている柔術スタイル』の仕組みを解剖学的に分析。
同時に、ルオトロの柔術に再現性を持たせるための仮説を探します。
高橋 賞金1億5,000万円のために数多の猛者が参戦し、幾多の名勝負が勃発したグラップリングの世界的イベント「CJI」。
優勝はONE championshipでの活躍で日本の格闘技ファンにも認知が大きいケイド・ルオトロという結末に終わりました。
森安 ONEでも無敗、2年前のADCCも優勝。ここ数年で本当に最強と呼ぶに相応しい選手になったよね。
高橋 そして、ルオトロ兄弟と言えば、絶対にボトムにならずに常にレスリングとトップゲームで勝負をするダイナミックなファイトスタイルがトレードマークです。
森安 兄のタイ・ルオトロは、レスリングの専門家のジェイソン・ノルフとの試合でも自分から寝技はせずにレスリングで真っ向勝負してたよね。
高橋 あれも凄まじい試合でした。レスリングの攻防で序盤はタイが押されるんだけど徐々に押し返して…。
この試合をもとに、「なんでレスリングの専門家にグラップリングの試合ではグラップラーって勝負出来るの?」みたいな話は第一弾の記事でしてましたよね。(記事は下記リンク先)
その節も大変面白い結末を聞かせていただきまして。
森安 タイとケイドの強みは見たまんまパスとレスリングだと本人達も周りも言ってる事が多いけど、彼らのパスとレスリングは技術的には何が特別なわけ?
高橋 んー。パスもレスリングも勿論すごくハイレベルなのは間違いないんですけど、彼らを特別にしている最大のファクターは「スクランブルの強さ」だと思っています。
森安 攻防がごちゃごちゃってなって、激しく動きながらポジションを取り合う…日本の格闘技文化的に言えば「キワの攻防」ってやつだね。
高橋 俺もルオトロ兄弟の試合中継の日本語版解説を何度か務めさせていただいていますが、その時にもよく言っている事で。
スクランブルの中でポジションやサブミッションを取り切る能力がめちゃくちゃ高いんですよね。決して下にならないファイトスタイルもこの強みを生かすために有効に働いていて、手足が長くて懐が深くバランスの良いルオトロをテイクダウンしにいくとスクランブルになっちゃうんですよ。
だからといってパスもめちゃくちゃ強いし、パスされかけようものならまたスクランブルになっちゃうし…と、ルオトロ兄弟の強みを技術的な観点から言語化するとこんな感じになるかと。
特にこの点、ケイドに強く感じますね。
森安 なるほど。そんな中で今回のテーマは?
高橋 世界一の称号を掻っ攫いまくっているケイド・ルオトロの強さの秘密「なぜかスクランブルで絶対負けない」という特殊能力を、解剖学で丸裸にしていただこうかと。
森安 面白い!やりましょう!
ケイド・ルオトロの『いま世界で一番勝っている柔術スタイル』の仕組みを解剖学的に分析。
高橋 という事で、今回はCJIを制覇したケイドの強さについて森安さんに解剖学的な視点から深掘りしていただきます。
森安 はい。まずは、ケイドの最大の強みである「スクランブルの強さ」ですがそもそも「スクランブルとは何か?」を解剖学的にちゃんと定義するところから始めます。
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