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【対談集 vol.1】 鈴木ユキオ「刻の花」/「moments」について

鈴木ユキオプロジェクト公演「刻の花」/「moments」(2022.7/1-3 @シアタートラム)では、ソロとグループ作品のダブルビル上演が予定されている。そのグループ作品「moments」では、これまでカンパニーメンバーで新作発表をする機会が多かった鈴木にとって新たな試みとして、3人のゲストダンサーを迎えての制作。それぞれのフィールドで活躍を見せるダンサー小暮香帆・中村駿・西山友貴の3名に、クリエイション真っ只中の5月末、稽古場で話を聞いた。

ユキオ「カンパニーのホームとも言えるシアタートラム公演では、これまではメンバーのみで新作制作に臨むことが多かったんだけど、今回はそのうち2人が出演できない状況で、どうしたものかと考えました。少人数に絞るという手段もあったけど、なんとなく「オープンにしたい」と思ったんだよね。そこで、ゲストダンサーに出演してもらうことに。ダンサーとは時間をかけて身体感覚やダンスの思考を共有していかないといけない時期もあったんだけど、コアメンバーとの時間やワークショップでいろんな人に自分のダンスや感覚を伝えることを通して、言語化できるようになったという「今」だからこそ、できたことだと思う。オープンにすること、他のダンサーに渡すことも面白いんじゃないかと。もちろんじっくり閉じる時間も必要なんだけど、ある程度積み上がってきたら、川の流れのように、外に流した方が、また自分に新しいものが入ってくる気がするしね。で、なんでこの3人かというと…」

駿「それがずっと聞きたいと思ってました!で、この前、チラッと聞いてみたら「顔かな」って(笑)」

ユキオ「まあ、それは冗談として(笑)、『シンプルにカラダで魅せられる若いダンサー』と一緒に作品を作りたくて、浮かんだのがこの3人だったかな。それぞれにバックグランドや所属は違うけど、『カラダでダンスができる人』だと思っています。駿くんとは、韓国や地方とかでちょくちょく会ってたんだよね」

駿「野外のソロ(蒲田、さかさ川ダンス横丁)を拝見して、もうとにかく『かっこいい』と刺激をもらいました。身体が在るというそのシンプルさ。シンプルなかっこよさ。その時から『どうやったらこうなれるのか?』と思っていたので、今回ご一緒できてものすごく嬉しいです」

さかさ川ダンス横丁  ©︎Hiroshi Wada

友貴「私もそう。ユキオさんの踊りは、独特の質感というか動きの線や残像が目に焼き付く瞬間が多くて、でも、それがなんなのか言葉で説明できなかった。でも、今回のリハーサルでその謎が少しずつ自分の中で繋がっていく感じがしています。ダンスに回収されないダンス。毎回『なるほど!』と目から鱗で、脳みそがひっくり返りそうなんですが、実際やるとなるとこれが難しい(笑)。その繰り返しです。でも、身体そのものがびっくりすることに出会えている感覚があって、もうとにかく面白くて楽しいんです。私自身、今の自分だからユキオさんの言葉を理解できているところもあると思うので、タイミングも良かったのかなと思います」

香帆「私は大学のワークショップで初めてきちんとお会いしたのですが、ユキオさんのダンスを見てる時も、ご一緒させてもらっている時も『滑らかな刃物』って印象があります。気づいたら気持ちよく刺されているような(笑)。前回のトラム公演(「人生を紡ぐように 時の流れを刻むように」)も拝見して、ダンサーそれぞれがそこに違う身体として存在していて、でもしっかりと何かを共有しているように見えました。今回のリハーサルで、なぜそう感じたのか、少しずつわかってきているところもあります。身体性を合わせながら、一瞬を掴んでいくような作業。ユキオさんの言葉や振付を、身体に落とし込んで消化していく中で発見すること、その新鮮さ。ものすごく勉強になっています。ありがとうございます!」

ユキオ「いや、まだ終わってないから(笑)」

「人生を紡ぐように 時の流れを刻むように」©︎bozzo

駿「僕は今まで、決まった振付や演出に、身体を沿わせるような作品が多かったんです。でも、自分は即興的なダンスも好きですし、根っこの部分で『もっと変動したい。踊っている最中も、自分の感覚や身体と対話しながら常に変わり続けたい』と思っていました。そして、今回の機会に、その一端でもいいから感覚を掴みたいと。ユキオさんはリハーサル中、いっぱい言葉にしてくれますよね。その言葉一つひとつを身体や感覚に入れながら、自分の内側で発見していく。まるで自分の感覚や新しい身体の魅力を探っている時間のようで、とても嬉しくなります。常に何が起こるかわからない緊張感もあり。抽象的に見えるかもしれないけど、ものすごく具体的だったり、その逆だったり。そういう感覚を本番までに掴みたいです」

ユキオ「3人とも感覚が鋭いし、柔軟な思考があるから、こちらも振付や演出をしていてすごく楽しいよ。ダンサーとしての身体はしっかり身に着けているからこそ、いろんなことを試すそのプロセスが楽しい。僕は舞踏出身で、複雑な身体や振付言語を持っているんだけど、それを、ダンサーのシンプルでノイズがない身体に入れることで、もっと伝わりやすくなるし、新しいところにいける感覚があるんだよね。メンバーとは長い時間をかけて、ひたすらそれをやってきた。振付をした後で『それはあなたにとってどういう感覚なの?』とフィードバックをもらいながら、自分の感覚とすり合わせていくんだけど、それを、初めて一緒するダンサーともできて、演出していてもとても楽しいよ」

香帆「こちらは、『これかも!』って思うと、別のところに正解が落ちてたり、浮かんできたりするような毎日です。ユキオさんの言葉と自分の感覚を取りこぼさないように必死!」

「moments」リハーサル風景 ©︎Saki Yagi

友貴「本番までになんとか、、、あと一ヶ月!」

ユキオ「いい作品になる予感がしてる。新作「moments」では、瞬間の見せ方を色々提示して、物語はないけど時間が紡がれていく作品。オープニングから面白いし、今自分がチャレンジしたいことを詰め込んでると思ってます。圧倒的に同質化する良さと、いろんな人が共存する心地よさ。チラリとその人らしさが見えてきたりして、その凸凹が作品を豊かにしてくれる感じがあるね」

香帆「菜緒さんやはるかさん(カンパニーメンバー)を見てると、頭が軽く見えるんですよね、頭で考えてるはずなのに、身体で考えているように見える。それがやりたいって思ってます」

ユキオ「思考するとどうしてもパフォーマンスのエネルギーが落ちるからね。考えて考えて考えて、それから考えることをスパッとやめる。それを繰り返すと、感覚に落ち込んでくる時があると思うよ。メンバーはそれをやりこんでるから、再現性が高い。今日と明日では、身体も感覚も違うけど、同じパフォーマンスに到達するということ。きっとわかってくると思う」

香帆「リハーサルでは、とても丁寧にトライアンドエラーを繰り返す感じを楽しんでいます。その新鮮であり続ける感覚を本番まで続けていきたいですね。そして、それは私だけではなく、観にきてくれる方にとっても、特別な時間になるのではないかと思いますので、ぜひ多くの方に観ていただきたいですね」

駿「そうですね。僕は、一緒にできたらと思っていた人達とこうして踊れる貴重な時間を大切にしたいと思います。そして、一瞬一瞬、自分自身に素直に踊りたい、舞台に立ちたいと思っています」

友貴「今回は私にとっても初めてのことが多くて、新しい。カンパニーの中に入って出演することも初めてだし、ユキオさんの動きの生み出し方も新鮮。これまで使っていた経路じゃないところを使って動きを生み出し、向かい合っているような不思議な感覚です。本番まで、不器用ながらこの新しい感覚を楽しんで過ごしていきたいと思います」

ユキオ「3人の魅力を生かしながら、新しい挑戦をつめ込んだ「moments」にしたいと思います。自分のカンパニーで積み重ねたことを、もっと多くの人と共有することで見えてくるダンス。そこに未来を感じています。今回がその第一歩になれればいいなと思っていますので、今、各地でがんばっているダンサーやアーティストにもぜひ観て欲しいですね。あと一ヶ月、よろしくお願いします!」

(左から)中村駿・小暮香帆・西山友貴・鈴木ユキオ

<小暮香帆  Kaho Kogure>
6歳より踊り始める。自身の作品を発表しながら劇場、音楽ライブ、メディアなど様々な領域で活動。ソロ作品「ミモザ」(2015)は初演以来3ヶ国9都市で上演。また笠井叡はじめ多数振付家作品に出演、海外ツアーに参加。近年はオーケストラ、他ジャンルのアーティストとのコラボレーション、グループ作品や映画の振付をおこなう。第2回セッション・ベスト賞、第6回エルスール財団新人賞受賞。DaBYレジデンスアーティスト。WEBSITE

<西山友貴   Yuki Nishiyama>
筑波大学体育専門学群を卒業後、同大学院を修了。在学中、文化庁新進芸術家海外研修員として1年間NYに留学。2013年より〈Co.山田うん〉に参加。他にも平山素子、北村明子、向井山朋子、近藤良平、Inbal Pintoなど様々な振付・演出家の作品に出演。近年では、白井晃の音楽劇、長塚圭史の演劇やミュージカルに出演するなど活動の場を広げている。2018年には、ダンスユニット〈Atachitachi〉を立ち上げ、自身の創作活動にも意欲的。流通経済大学ダンス部監督。WEBSITE

<中村駿  Shun Nakamura>
高校入学と同時にブレイクダンスを始め、大学時代からコンテンポラリーダンサー・振付家として活動開始。黒須育海主宰「ブッシュマン」メンバー。学校、空港、海外でのワークショップ、街中や競馬場でのパフォーマンス、MV出演、オペラ振付と幅広く活動している。長塚圭史、近藤良平、森下真樹、遠田誠、北尾亘等の作品に出演。横浜ダンスコレクションEX2014 コンペティションII 最優秀新人賞受賞。「SAI International Dance Pre Festival 2017」SAI Award (1位)受賞。東京2020オリンピック開会式出演。

YUKIO SUZUKI projects  「刻の花」/「moments」
7月1日(金)19:00
   2日(土)14:00 / 19:00
     3日(日)14:00
シアタートラム(東京都三軒茶屋)
【振付・演出】鈴木ユキオ
【出演】
「刻の花」鈴木ユキオ・八木咲
「moments」安次嶺菜緒・赤木はるか・山田暁・小暮香帆・中村駿・西山友貴・小谷葉月・阿部朱里 

瞬間に捉えられたものは永遠の時間を帯同する
八木咲の写真を通して、過去と現在、少し先の未来を行き来しながら時間のずれを観客と共に体感するソロ作品「刻の花 -トキノハナ」と、一人ひとりのかけがえのない時間が交錯し衝突しすれ違い何かを生み出し破壊する、そんな世界の断片を集めた新作「moments」。
「身体でしか言い尽くせない世界」を求め続ける振付家・鈴木ユキオが描き出す「時間(とき)」にまつわるダブルビル

【チケット】
一般前売 4,000円 当日 4,500円
U24前売 3,000円 高校生以下 2,500円
世田谷パブリックシアター友の会 3,700円 せたがやアーツカード会員 3,800円
【ご予約】
●世田谷パブリックシアターチケットセンター
03-5432-1515 (10:00〜19:00)
●世田谷パブリックシアターオンラインチケット(要事前登録)
 http://setagaya-pt.jp
●Peatix
https://yukiosuzuki.peatix.com(オンライン決済)
【お問い合わせ】
http://www.suzu3.com
【公演詳細】
https://setagaya-pt.jp/performances/202207suzukiyukio.html

振付・演出:鈴木ユキオ
舞台監督:河内崇
照明:筆谷亮也
サウンドデザイン:齊藤梅生
楽曲提供:前原秀俊
衣装:山下陽光(途中でやめる)
宣伝美術:八ツ橋紀子
記録写真:大洞博靖
企画制作:鈴木ユキオ制作事務所
制作協力:鄭慶一
主催:YUKIO SUZUKI projects
提携:公益財団法人せたがや文化財団 世田谷パブリックシアター
助成:芸術文化振興基金
協力:公益財団法人セゾン文化財団・中央線芸術祭
後援:世田谷区

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