カントの理論を数理モデル化
イマヌエルカントは人の認識の構造を対象から感性と悟性という2段階のフィルターを通して個々人の中に像を作っていると考えた。
これは、実際の人間の物理的構造としては何に対応しているのだろうか。
具体例として、物体から(感性によって)視覚情報を得て、視覚情報から(悟性によって)それが表しているものが何であるかを判断する。ということをかんがえる。
これは、物理的なシステムとして捉えると、対象をカメラで撮影してデジタルデータとして、そのデータを画像認識するという2段階の構造として捉えることができる。
もうすこし、それぞれの段階について踏み込んで考えてみよう。
第一段階、感性の働きというのは、電磁波を色として捉えるということに相当する。この世界は色に満ち溢れていると考えがちだが、実際にこの世界に色は存在していない。ただ電磁波が飛び交っているだけである。その電磁波をカメラや人間の目が捉えて、フーリエ変換して、波長に対応する色というクオリアを脳内で作っているにすぎない。これが感性で行われていることである。
では、第二段階の語性ではどのようなことが行われているといえるのかというと、感性によって得た、色というクオリア、コンピュータなら数値による画像データからより抽象的な概念を作りだす作業が行われている。よくよく考えてみると、単なる数字の並びである画像データがどうして画像に写っている物体の概念というレイヤーの違うものに変わっていくのか不思議ではないだろうか。その説明が長くなるのでここでは述べないが、畳み込みニューラルネットワークというのが大きなヒントになるのではないかと思う。
カントの述べていた二段階の抽象的な理論が今や具体的な形で実装されつつある。概念のなりたちなど哲学の領域とされていた問題に数理モデルの側面から考えることができるようになっている。