仮想通貨リブラは、中国へのアンチテーゼになりうる
仮想通貨リブラに対して、アメリカでは反対が強い。これを規制すべきであるとか、禁止すべきであるといった意見が議会などから出されている。これは、中央銀行の金融政策が影響を受けることに危惧を持つからだ。
しかし、本当はアメリカは、これを育成すべきだ。
リブラは仮想通貨なので、独自の通貨圏を形成する。また、リブラは、ドルなどに対して価値を安定させるとしている。これが実現すると、弱小国通貨からの資本流出が発生するので、大きな脅威になるだろう。この問題が起きるのは、弱小国だけではない。中国の人民元から資本流出も生じる。
だから、仮想通貨は中国にとって大きな脅威になりうるのだ。中国がビットコインを禁止ているのは、このためである。
中国では、アリペイやウィーチャットペイが10億人規模の利用者を獲得している。これらは仮想通貨ではなく、電子マネーだ。
電子マネーは、従来の金融制度の中にある。簡単に言えば、銀行預金の引き落としを簡単に行うための手段に過ぎない。
電子マネーには管理主体があるので、国が規制できる。
しかも、取引データが蓄積される。アリペイの場合、これを用いた「ゴマ信用」という信用スコアリングがすでに行なわれている。顔認識での支払いが行われるようになると、さらに多くのデータが集まる。
中国の場合、こうしたデータは、電子マネーの管理者が用いるだけでなく、国や公安当局によって用いられている可能性がある。
つまり、電子マネーは、中国のような国家にとっては都合の良いマネーなのだ。
仮想通貨であるリブラは、これに対する強力なアンチテーゼとなりうる。
米中経済戦争で、アメリカはファーウェイを叩き潰そうとするなど、中国の発展に対して強い危機感を持っている。本来であれば、リブラをそのための最も強力な武器になしうる。冒頭で述べた規制論は、こうした可能性を全く考えていない。