仮想通貨リブラについて重要なのは、規模というより、価格の安定性
Facebookが計画している仮想通貨リブラについて、多くの人はその規模の大きさに注目する。確かに、Facebookの利用者は全世界で24億人とか27億人と言われているので、これらの人がすべてリブラを使えば、現存するあらゆる通貨圏より大きなものが実現する可能性がある。そしてそれが、既存の金融機関や中央銀行の金融政策への影響など、さまざまな問題を引き起こすのも事実だ。
しかし、次の点に注意する必要がある。
第一に、電子マネーであれば利用者が十億人を超える規模のものは、すでに存在する。中国のアリペイもウィーチャットペイも、利用者数は10億人を超えると言われている。プラットフォーム企業が電子マネーを運営すれば、この程度の規模のものは実現できるわけだ。
だが、電子マネーは銀行システムの上に築かれているので、独自の経済圏を作ることはできない。
リブラは電子マネーではなく仮想通貨であって、ブロックチェーンで運営される。これは、既存の金融システムと関係なしに運営できる。だから、独自の経済圏を形成できるのだ。
ただし、それは、制約をも意味する。なぜなら、ブロックチェーンの処理速度が問題になるからだ。
これは「スケーラビリティー」と言われる問題だ。リブラの処理速度は、1秒間に1000件程度と言われている。これは、ビットコインの場合の1秒間7件と比べれば大きな進歩だが、そうであっても、数十億人の取引を処理できるかどうか分からない。
リブラの規模がどの程度のものになるかは、リブラブロックチェーンがどの程度の性能になるかによる。
人々はまた、有名企業が参加する「リブラ協会」にも注目している。しかし、協会はリブラの仕組みを決定はするが、リブラの信頼性は、これらの企業への信頼によるのではない。これについても重要なのは、リブラブロックチェーンの信頼性である
リブラは、価格が安定した仮想通貨だ。したがって、投機の対象となって手数料が高騰するようなことはないだろう。また、受け取り側としても、価値の下落を怖れる必要がない。これは、ステイブルコインと言われるものである。さまざまな試みがなされてきたが、満足できるものは存在しない。
また、電子マネーと違って、誰でも簡単に受け取り者になれるし、受け取ったリブラを他の支払いにあてることもできる。これによって、ネット上のマイクロペイメントが簡単に行えるようになることのほうがはるかに重要だ。
リブラは、ビットコインが行おうとして実現できなかったことを実現できる可能性を秘めている。