拡大する格差
コロナが人々の所得に与える影響は、人によって大きな差がある。ほとんど影響を受けていない人がいる半面で、大きく落込んでいる人がある。これまでもあった格差が拡大し、新しい格差が生じている。政府の対策は、こうした事情に適切に対応できていない。また、状況が人によって大きく違うので、政策についての合意も難しい。
1.賃金水準 はあまり大きく下落していない。業種別にも企業規模別にもあまり大きな差はない。売上高が極めて大きく減少している宿泊業、飲食業、娯楽業においてさえ、下がっていない。つまり、雇われ続けている限り、生活水準はあまり下がっていない。
家計調査、毎月勤労統計調査、法人企業統計調査。
2.問題は雇われ続けられるかどうかだ。これには、立場によって大きな差がある。第1は雇用形態。正規雇用者は減っていないが、非正規雇用者 が減っている。職を失った非正規雇用者は、職探しの努力を止めていると思われる。このため、失業者 が増大しない。
労働力調査。
3.人員減少は、業種別、企業規模別で大きな差がある。宿泊業、飲食業、娯楽業 の零細企業において減少が激しい。これらと 非正規雇用者 の減少の多さは関連していると思われる。つまり、これらの業種の零細企業に非正規が多いのだろう。
なお、労働力調査、法人企業統計調査では休業者の扱いが違うと思われ、このため、数字に齟齬がある。
労働力調査、法人企業統計調査。
4.企業利益 が大きく減少している。零細企業 の場合には、営業利益は経営者の所得と同じようなものだ。これは、業種別、企業規模別に大きな差がある。コロナによる影響で、宿泊業、飲食業、娯楽業で大きく減少している。零細企業の多くは 赤字 に陥っている。
法人企業統計調査。
5.個人経営の 自営業 や フリーランサー が大きな打撃を受けている。零細法人企業 と同じような状況か、あるいはもっと悪い。ただし、これについての実情は、現時点の統計ではよく分からない。もっとも大きな打撃を受けている人たちの状況は、統計に現れていない。
国税庁統計。