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コロナの感染防止より、経済拡大に力点を置く追加経済対策

 政府の追加経済対策は、コロナの感染防止より、経済拡大に力点を置いている。しかし、この冬の感染拡大を阻止しなければ、日本経済に展望は開けない。また、巨額の国債発行が経済に与える影響も考慮すべきだ。

◆ 感染拡大防止より、経済拡大優先
 政府は12月8日に、追加経済対策を決定した(「国民の命と暮らしを守る安心と希望のための総合経済対策」について」https://www5.cao.go.jp/keizai1/keizaitaisaku/2020-2/20201208_taisaku.pdf
 事業規模が73.6兆円、財政支出は40兆円だ。
 財政支出の中身を見ると、「新型コロナウイルス感染症の拡大防止策」は5.9兆円と、全体の15%に過ぎない。
 それに対して、「ポストコロナに向けた経済構造の転換・好循環の実現」は18.4兆円と、46%になっている。これは、デジタル化、グリーン社会の実現などの他、旅行需要の回復などを含むものだ。

 つまり、追加経済対策は、コロナの感染を防止するというよりは、コロナの感染が終わった後で、経済をどのように活性化するかに力点を置いたものだ。
 
 経済拡大が重要な課題であることは言うまでもない。しかし、現時点で緊急に必要なのは、第3波の急速な感染拡大を、何とか阻止することだ。
 そのために、政府は全力を尽く必要がある。
 そうしたことから考えると、追加経済対策の内容には、首を傾げざるをえない。

 幸いにして、これまで日本では、コロナの感染者数も死亡者数も、欧米諸国等に比べれば大幅に少ない。しかし、今後もそうである保証はない。
 この冬を乗り切れるかどうかは、今後の日本にとって重大な意味を持つはずだ。それにもかかわらず、GoTo政策などを続けようとする政府の姿勢には、強い恐怖感を覚える。

 経済の構造改革に取り組むべきだ
 現在、約200万人もの人々が、雇用調整助成金によって支えられている。
 特例措置は、2021年2月末まで延期されることとなっているが、現在の状況をいつまでも続けてよいのかどうかは、大きな疑問だ。
 本来は経済の構造変化に合わせて労働の再配置を行うことが必要だ。そのための具体的な施策を展開すべきである。そうでないと、何も仕事をせずに賃金をもらえるという状態に人々が慣れてしまう。これは、経済の長期的パフォーマンスに多大の悪影響を及ぼす。

 追加経済対策の財政支出の大部分は、国債で賄われる。その結果、2020年度の新規国債発行額は100兆円超となる。
 これは、経済にいかなる影響を与えるのか?
 これまでのところ、経済全体の需要が縮小しているので、金利上昇などの問題を引き起こすには至っていない。
 しかし、経済が回復するにつれて、金利上昇によって国債発行が困難になる状況も考えられる。
 このように巨額の国債発行が日本経済の長期的なパフォーマンスにいかなる影響与えるかは、もっと真剣に考えられるべき問題だ。


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